カルダモン

ヒッチコック/トリュフォーのカルダモンのレビュー・感想・評価

4.0
1962年当時、31歳の気鋭監督だったフランソワ・トリュフォーが巨匠アルフレッド・ヒッチコックを相手にインタビューを敢行。ハリウッドのユニバーサル撮影所で1週間、朝から晩まで毎日7、8時間、食事の間も自身の全作品について語られたのだそう。インタビューは同時通訳、写真家も交え、後に『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』というタイトルで書籍化される。
映画版ではこの書籍をベースに、現代映画作家のインタビューと解説によって改めてヒッチコックの映画術が語り直された。
マーティン・スコセッシ、デヴィッド・フィンチャー、ウェス・アンダーソン、リチャード・リンクレイターなどの顔ぶれが、ヒッチコックを前に等しくファンの顔になっているのが微笑ましくもあり。

困ったことに、このドキュメンタリーを観終わった後、無性にヒッチコック作品を片っ端から見直したくなってしまった。
観たい映画が山積みになっている今、なかなかその副作用はキツイのだが、それでも新作を無視して改めてヒッチコックに浸かりたいと思う時はあって、無性に欲しているような時、昔から知っている味のようにスッと心身に馴染む。時間の操り方、画面の切り取り方、照明の表情。わかっていても面白さが目減りしないサスペンスの不思議。

ヒッチコックの言葉はとてもシンプルに届く。

「私は視覚的に考える。
光が形や美しさを生み出す顔だってそう。全ては光と陰なんだ 」