うさふわ

アイリッシュマンのうさふわのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
4.5
この日が来るのをどれほど待ち焦がれたことか。

あっという間の209分の幸せが、永遠に続けばいいのにと、棺桶に想った。
この一時が最高に幸せ!!!

なんとマーティン・スコセッシ(77)を監督に迎え、俳優陣がロバート・デ・ニーロ(76)、アル・パチーノ(79)、ジョー・ペシ(76)、ハーヴェイ・カイテル(80)と、悶絶ものの錚々たる顔ぶれ。
全員アラウンド80の奇跡のブラザー!!!
燻銀達が今日再び顔を合わせて、男の世界を見せてくれる日が来る事になるなんて夢にも思わなかった。
あー生きててよかった…。

生と死、安寧と緊張が常に隣り合わせにある、画面を通した裏社会が大好きな私はずっと心中微笑みながら観てた。
神様ありがとう…。

実際に起きた未解決事件を取り巻く反社会勢力の交友関係、人間ドラマを、老齢の孤独な男フランクが語り出す。

前半は先代のアウトロー映画のオマージュのオンパレード、フフッと笑えるユーモアと安定感が心地いい。
次第に登場人物達の魅力にグッと引き込まれ、信頼と不信感が水面下で揺れ動く。
義理、プライド、生存本能が引き金となり、ピリッと張り詰める緊張感は、流石スコセッシ。
息を飲む決定的な瞬間には開いた口が塞がらない。

一人一人の人物像を多面的に捉えており、登場人物を『ゴッドファーザー』と対比しながら観てた。
正直ストーリーは期待していなかったけど、シワの数だけ深く刻まれるこのドラマは重厚で、圧巻の貫禄。それもこれも全てレジェンドのなし得る所業。

トラックの運転手から裏の世界に染まり上がって行くフランクを演じるロバート・デ・ニーロ。狂気の二面性と、歳を重ねた味のある穏やかな顔相の彼が大好きだ。

腹の底で何を考えているか分からない男、生粋のマフィア、ラッセルを演じるジョー・ペシの、冷徹さを語る薄い唇、目の座った鋭い眼光に終始ドキドキした。

そしてこれまでヒールで孤独な役を演じて来たアル・パチーノ。今回演じる全米労働組合トップのジミーは、人々を虜にするカリスマ性とその地位までのし上がってきた野心、喜怒のアップダウンはあるが、彼の秩序は至ってシンプル。妻を愛し、誰よりも人を信じていた彼が、悲しく愛おしかった。

めくるめく変わる人間関係と、その先に待ち受ける現実的な末路。
川底に沈んだ銃の数だけドラマがある。

裏社会の史実と映画作品を昇華するカタルシス。
終止符を打った物語の扉が未来に続く。
これぞマーティン・スコセッシの集大成。
映画史を彩った彼らに安らぎを。
うさふわ

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