ohassy

アイリッシュマンのohassyのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
4.0
総尺3時間半の長編は映画と思うと腰が引けるけれど、大河ドラマにでもした方が良いのではと思わせる内容は、飽きないどころか3時間半でも足りないくらい。
35ミリで撮影されたスコセッシの実録マフィア映画の集大成としては、本来なら映画館で観たかったけれど、そのうち機会もあるだろう。

本作を観ている間、実にいろんなことを思い出した。
それはスコセッシの過去作でもある「グッドフェローズ」やっぱり「カジノ」から「ゴッドファーザー」、「セント・オブ・ウーマン」あたりの映画を思い出し、そこから映画にまつわる個人的な思い出が引っ張り出される仕組みで、なるほど集大成とはこういうものか。
「グッドフェローズ」「カジノ」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」などに代表される、スコセッシらしいミュージックビデオ的なテンポの良い編集は今回は影を潜め、腰の座った演出が楽しめるのもまた、これまでの積み重ねの賜物なのだろう。

出演者がハリウッドマフィア映画界のアベンジャーズなので、彼らをじっくり見ることができるのは本当に眼福である。
アル・パチーノはなんとスコセッシ映画初参加!
そうだっけ?なんか出てなかった?と思ったけれど、もちろん出ていない。
デ・ニーロとの共演は3作目だけれど、「ボーダー」はなんとなく満足度が低いし、僕の中で「ヒート」は共演してないので、ここまでガッチリした共演を楽しめた作品は初めてだと思う。
僕にとってデ・ニーロとアル・パチーノは、本当に特別なふたりなのだ。
もちろんジョー・ペシもいつもとはまた違う、なんとも穏やかで老獪な怖さが良かったし、ハーヴェイ・カイテルのチョイ役ぶりはどうだろう。
演技合戦は痺れるしかない。

演技と言えばアナ・パキンが、ほとんど何もしゃべらないのにすごい存在感というか、作品と、アイリッシュマンことフランクの人生における大きな重しとしてドスンと置かれている様が素晴らしい。
「グース」のあの子がなあ、目線だけでアベンジャーズと対等に渡り合うなんて。
マフィアのソルジャーとして「ペンキを塗り続ける」ことで家族を養い守ってきたつもりのフランクの人生の無意味さを、彼女の存在が痛々しく表す。

この実話というか、告白によりアメリカが文字どおり震撼したということだけれど僕には全くピンとこない。
日本でいえば坂本龍馬暗殺に関しての今井信郎の証言といったところだろうか(どちらにせよ分かりにくい)。 映画館で観たかったとは言うものの、Netflixなら何度でも観られる。
このような作品を、時々思い返したように観直せるというのは贅沢の極みだ。
ohassy

ohassy