カルダモン

ノクターナル・アニマルズのカルダモンのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
4.8
ギャラリーで異形の姿を晒す裸婦。オープニングで醜悪な人間の美がいきなり暗示、あるいは展示され、逃れようのない視線に体が石のように固まる。

アート界でブルジョワ的生活を送るスーザンの元に、別れた夫エドワードから「真夜中の獣」と題された原稿が届けられる。第三者である我々観客が、スーザンの心情を借りて覗く小説の世界、そして過去の回想が呼応しながら物語が編まれていく。

ベッドに寝そべった男女の裸体が、ソファの遺体に重なるように、現実と虚構は画面のカットバックで呼応するかのように展開されていく。バスタブ、シャワー、PCメール、赤のライティングでの交信が視覚デザインされ美しい。

「あなたは彼を傷つけるだけ。やがて彼の長所も憎むようになる。あなたと私はとてもよく似ている」母親の言葉が呪いのように、拒絶しても抗えないスーザンの表情は虚無的。エドワードの小説にのめり込むに連れ、次第にその表情の中に''女"が蘇っていくように思える。

ラストの解釈は様々だろうが、物語の中でエドワードは死に、彼女の中で物語は生きていること、そして「物事を永遠に生かすために書く」というエドワードの言葉が意味を帯びながら、幕を閉じていった。