ベルサイユ製麺

ストーンウォールのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

ストーンウォール(2015年製作の映画)
3.1
ストーンウォールという言葉だけは聞いた事が有りましたが、どんな出来事であるか、そしてそれが映画化されているという事は知りませんでした。しかもエメリッヒなのに。ホント不勉強です。

1969年、NYでの『ストーンウォールの反乱』を忠実に描いたという本作ですが、主人公は架空なのだそうです。本当の自分と向き合い始めた青年の目を通して、当時のNYのLGBTシーンの光と、濃過ぎるその影を徐々に理解していく構成は、自然と観客を映画の内側に導くのに効果的であるとともに、監督自身のセクシャリティの立脚点を見つめ直す為にも、必要な手続きだったのだと思います。
当時のゲイの待遇は本当に酷かった様です。自分は性的マイノリティーの自覚は無いのだけど、棍棒で滅多打ちにされるシーンは、心の根っこを殴られるみたいだったよ。誰だって、いつか何処かで異邦人の様な気分だった事がありますよね。
クライマックス、主人公が下してしまうある決断と、その後の顛末。実話とはいえ、それらをまるで混じり気なしのポジティブな出来事の様に描いてしまうのには、どうしても違和感を感じてしまいました。理屈が通じない出来事には、理屈を超えた対抗手段しか無いのも分かるのだけれど…。その一点において、思想的に偏ったプロパガンダ映画の様に捉えらてしまいかねないんじゃないかな。なんだか勿体無い。

LGBT問題についてシリアスに考えたいなら『ミルク』、勇気が欲しいなら『パレードへようこそ』の方をお勧めします。

比較的近い意味合いの題材を扱った、キャスリン・ビグローの『デトロイト』がどんな仕上がりになっているのか興味深いですね。