ひでやん

レディ・バードのひでやんのレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
3.8
温かくも窮屈な巣の中で、悩む心の揺らめきと、未知なる空への羽ばたき。

女優として活躍するグレタ・ガーウィグが、自身の出身地を舞台に自伝的要素を取り入れながら描いた青春映画で、単独監督デビュー作。

高校最後の年にある様々な悩みを女性目線で描いているが、男目線でも共感できる場面が多々あった。思春期の多感な時期を思い出すと、自分は意地ばかり張って恥ばかりかいていたな…。

開幕早々わんぱくが過ぎるレディ・バードが心をかっさらう。女の子の可愛らしさだけを切り取ったりせず、長所も短所もさらけ出した等身大の彼女に親近感を抱いた。

「あんたを育てるのにどれだけお金がかかると思ってるの?」なんて経済的マウントをとられると、攻撃力は弱いが「働いて返す」という反撃に出る気持ちは分かる。干渉されると鬱陶しくて、ほっとかれると寂しい。衝突しても謝れず、離れてはじめて感謝する。

ほんの少しのきっかけで友達と離れ、新たなグループに身を置きながら居心地の悪さを覚える。当たり障りのない会話で喧嘩もできず、笑みを浮かべてやり過ごす。そこから抜け出し友達の元へ戻ると、素でいられる自分にホッとする気持ちも分かる。

親への反抗、友達関係、恋やバイトや進学などが90分の中に詰め込まれているが、各シーンにある心情描写が丁寧で痛いほど共感。サクサクと展開されるテンポは青春の体感速度だった。
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