ベルサイユ製麺

ダウンサイズのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

ダウンサイズ(2017年製作の映画)
3.6
人間を14等分にする話。ギャァ!
…じゃなくて、人間を1/14のサイズに縮小すると良いことしかないのではっ⁈…というお話です。多分!!!

ノルウェーの研究所が有機体を細胞レベルで縮小する実験に成功。人間社会をまるごと縮小出来るこの技術は、悪化し続ける環境問題を一気に解決(緩和?)出来ますし、副次的には資産価値が相対的に数十倍に膨れ上がるので、誰でも富豪のような裕福な暮らしてが出来る!アメリカンドリーム・アゲイン!と。…良さそう。
発表から数年が経ち、新しい生活を求め縮小化を選択する人達が(多分、レーシックする人ぐらいの割合で)現れるようになりました。主人公の医学療法士ポール(マット・デーモン)は、奨学金の返済などに追われ、貧困と迄は言えないものの夢のない生活を送っていて、いっちょ率先してパラダイムの野郎をシフトしてやろうとダウンサイジング処置を受けます。ポールがミラクル大作戦!イッツ・ア・スモールワールドへようこそ!
…まあ色々想定外の問題が発生しまして、元のサイズの頃より圧倒的に寂しい・侘しい新生活がスタート…。低いテンションの頭で冷静に見れば、スモールワールドは別に夢の世界ではなかった。別段やりたい事があるでも無い。犯罪は起こらないと聞いていたけど、ダウンサイズ特有の新しい犯罪も有るみたいだし。更に…
同じマンションに暮らすパーティ三昧の愉快な富豪ドゥシャン(クリストフ・ヴァルツ!)。彼の部屋で出会った義足の清掃係のベトナム女性ノク・ラン。…まじか。義足の?ベトナム人?って、テレビでやってた活動家の⁈感激!…じゃなくて、ノク・ランに連れられて訪れた貧民街を目にして初めて気がつきます。このスモールワールドにも、歴然と貧富の差が有る!と。
訳あってノク・ランの慈善活動に付き合って、貧しく不自由な暮らしを強いられている人達のケアをして回っているうちにポールの心にも少しずつ変化が…。

最初に設定だけ聞くと、とてもアレクサンダー・ペインが撮りそうに思えないようなトリッキーなお話だなぁと思ってましたが、話が進むにつれいつもの(というほど詳しくないけど)ペイン調になっていきましたね。
因みに、私の思うペイン調とは、
⚫︎主人公(男性で中年〜)が、放置していた蟠りの種や突如降りかかった予期せぬ出来事を精神的な成長・変化により乗り越える。大切なのはあくまで内面的な事。作品に悲壮感やサスペンス感は無くてジェントルな空気感…って感じですかね?

物語は以降、サイズがどうとか言う以前の大変な事実が判明し、おチャクラ全開中のポールはどのように身の振り方を決めるのか?そしてノク・ランって、ポールにとって何なの?などが焦点になっていきます。

実はペイン作品、自分にはちょっと難しく感じられます…。とにかく神懸かり的に上手い方なので、ストーリーが理解出来ないなんて事無いし、登場人物の心理の方向性もスッと頭に入ってきます。…入っては来るのだけど、深層の部分で「きっとこれ以上は分かることが出来ない」という岩盤にぶち当たる気がする…。主な理由の一つは、単純に自分がアメリカ人じゃないから。もう一つは、自分は成長や達観とは程遠いゴミ屑だから…。
ブラッド・バードほどでは無いのですけど、ちょっと立派な感じにいつも心がギィ〜、バタン🚪ってなっちゃいがちなんですよね。個人の意見!


役者はもうみんな良くて…
マット・デイモン、もはやキュートである!肉襦袢着て、うだつの上がらない感もアップ⤴︎です。マット・デイモン使ってダメな映画撮るのはカレーを不味く作るのに等しい。
ノク・ラン役のホン・チャウさん、多分絶対初めて見ましたが、めっちゃくちゃに良い!映画全然ののらりくらりとした雰囲気は彼女が作ってると思います。英語ネイティブだともっと良い感じに思えそうです。今後の活躍にも期待大!
クリストフ・ヴァルツはいつも最高。ただ、ティム・ロスなのかヴァルツなのか見分けるのに3秒ください…。

映画そのものは非常にグッドマナーで、本当に良い出来だと思うのですが…平均スコアめちゃ低いな、おい!ペイン・ドライバーくらわすぞ!
…とか言いつつも、実は気持ちは分からなくも無いのです。
このパッケージ写真を見て設定読んだら、普通は『ミクロキッズ』みたいなドタバタコメディか、『ミクロの決死圏』みたいなスペクタクルだと思っちゃいますよね。でも今作の場合、小さくなる事を使った見せ場がほぼ無い。序盤に小さくなった人達を普通人間が見て驚いてるシーンがあるくらいで、ポール自身が小さくなって以降は普通人間の存在は場面上も概念としても出てこなくなってしまう…。せっかくわざわざ“生産性が低いのに選挙権も平等なの?”っていう優生思想を想起させる問い掛けをしておいて、その辺りの答えも全く伺えない。これだったら変に荒唐無稽な“ミクロ化”みたいな題材にしなくても、せいぜい“サイバー空間への移行”ぐらいにしておいた方がまだ変な誤解を受けなくて済んだような気がします。パッケージングに難が有るなぁ。
…という事で、未見の方は「ミクロ化に娯楽的な期待をしないで!」と申しておきます!間違っても、マット・デイモンが女王アリとタイマンの末、次第に惹かれあったりしませんよ!!

🇺🇸そういえば、ノク・ランが口にする、非常に興味深い“アメリカ人の8つのFu×k”ですが、実は韓国にも“8つのシバ×マ”が存在すると言います!
⚫︎北のスパイが口を割らない時の“×バラマ!”
⚫︎ホントに撃ちやがった!の時の“シ×ラマ!”
⚫︎チンピラがナベをひっくり返して突っかかってきた時の“シ〜バ×マ!”
⚫︎獄中で裏切りにあった時の“シーバラ×ー!”
⚫︎幼馴染と半笑いで小突きあいながらの“…×〜バラマw”
⚫︎床が濡れてて滑ってすっ転んで“シ×ラマー…”ん?よく見ると、これ血⁈
⚫︎先輩刑事が冷麺をすすりながら後輩に説教中の“シィ~バ”
⚫︎K-POPガールズグループのメンバーがMステのひな壇で、日本人に分からないと思って笑いながら口の動きだけの“シバラマwww”
…☺︎どうですか?勉強になりましたか?基本的に人前で使っちゃダメ!!