松原慶太

日本列島の松原慶太のレビュー・感想・評価

日本列島(1965年製作の映画)
3.8
社会派・熊井啓の初期の作品。アメリカ人将校が神奈川で水死体で発見され、その調査を依頼された通訳(宇野重吉)の話。
ドキュメンタリータッチの地味な話だが、カメラワークも凝っており、ポリティカル・サスペンスとしてかなりおもしろい部類。

調査を進めていくうちに、件の将校はある種の謀略事件に巻き込まれていたことが分り、例によってGHQとか、下山事件とか、陸軍登戸研究所とか、「日本の黒い霧」的な展開をみせる。ここらへん、手に汗を握るような感じがある。

しかし宇野重吉みたいにモゴモゴしゃべるひとが通訳なんて勤まるのかなと思うのだけれど、英語をしゃべるシーンは少なめで、新聞記者(二谷英明)や、旧知の刑事などと協力しあいながら、戦後の闇に迫っていく。

ところで大滝秀治が事件の鍵を握る人物として登場するんだけど、60年前の映画なのにこの人だけ風貌がまったく変わらないw

ちなみに映画の出来とは関係がなく、当時の生活事情のせいだろうが、狭苦しい喫茶店とか蕎麦屋で「謀略機関がどうのこうの」「関東軍の偽札がどうのこうの」と大声で話しているので、オイオイこのひとたち大丈夫かな、と思っていると、案の定、関係者つぎつぎに謎の変死を遂げることになる。笑うに笑えない。

実話ベースなだけに、リアルに怖い話だが、小学校の先生役の芦川いづみのさわやかな存在感でラストは救われる。昭和史の勉強になりました。
松原慶太

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