カテリーナ

ルームのカテリーナのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
5.0
ジョイが部屋から救い出された
後に待っていたのは喜びだけではなかった
7年間の監禁生活で深い心の傷を負っている彼女に対して世間の心ない言葉が彼女の傷を抉る
「ジャックの自由の為に子供を手放す事は考えなかったの?」
せめて子供だけでも救う道を選ぶべきではなかったか?
この言葉のナイフによって
心に血を流し自分を責め精神を病むジョイは
最悪な状態でジャックによって発見される

セカンドレイプ
一度目は相手から
二度目は世間から
この図式が破られることは不可能なのか?
この壁にぶち当たる主人公達を
見るたびに胸が張り裂けそうになる

何故被害者を加害者のような
目で見るのか?

先の台詞をジョイに浴びせる
インタビュアーの顔に
唾を吐いてやりたい衝動にかられる
思いやりを持って問いかける事はできないのだろうか?

病院に担ぎ込まれたジョイが
身も心も疲れ果てた末に
自ら愛をもって慈しみ育てた
息子の思いやりのあるものによって
救われることになる
自分は親として落第だと
息子に向かい呟くシーンでは
信じられない言葉で慰めるジャックの
賢さに驚く

それは親としてではなく人間として
ジョイを救済する言葉だった
息子から
子を持つ全ての母親に捧げる言葉のように
も受け取れる

監禁された7年間の重みを
美しい音楽とジャックの可愛い声のナレーションでふわっと包み緩和されている
とりわけジャックが広い世界を知る過程が
本当に微笑ましく思わず笑みがこぼれる

おばあちゃんの恋人の飼っている犬に初めて会ったとき
ハンバーガーを口一杯に頬張ったとき
おばあちゃんに髪の毛を洗って貰ったときに芽生えた柔らかい気持ち

そのひとつひとつを観客が自分の子供のようにスクリーンのジャックを
見つめる眼差しは皆同じ想いだったろう

普通の母親と子供が特殊な生活環境を自らの知恵と工夫で乗り越え
馬鹿な世間の中傷を受けながらも
これから普通の生活を送るため
あの部屋へ再び訪れる
「さよなら」を言いに
そこから
ふたりの明日がはじまる
カテリーナ

カテリーナ