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ルームのhanaのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
4.0
エマ・ドナヒュー著「部屋」が原作。オーストリアで実際に起こった「フリッツル事件」から着想を得て執筆したそうですが、話自体はフィクション。

7年間”ルーム”に監禁された母親ジョイと、5歳の息子ジャックの物語。
噂どおり、母親役のブリー・ラーソンと、息子役のジェイコブ・トレンブレイ君の演技が突出して素晴らしいですね。

物語は、前半2人が監禁された”ルーム”での場面と、後半ルームから解放された”外の世界”での場面との2場面で展開されます。
衝撃的な内容に反して、描かれ方が終始穏やかな事に驚きました。

前半、ジャックの目線で捉えた、無限の広がりを持つ”ルーム”の表現がとても巧みです。2人が置かれた状況の異常さをソフトに伝えながらも、その中にある”精一杯の幸せ”を絶妙なバランスで描いています。母と息子。互いに支え合い、抱きしめ合いながら生きていくしかない。サスペンス要素も上手く織り込みながらテンポ良く、かつしっかりとした心理描写で場面が転換して行くのが印象的。

後半、”世界”に出た親子のそれぞれの反応の対比は、まさに大人と子供のそれでとても引き込まれました。戸惑い恐れながらも徐々に”世界”を受け入れていく息子ジャックに対して、母親のジョイは”世界”の厳しさに耐えきれず自らの殻に閉じこもってしまう。突き付けられた現実に追い詰められ、倒れ込んでしまうジョイ。しかしそれを救うのは、純粋で力強いジャックの母への愛情です。

”何でも試してみようと決めた”親子が、本当の意味で世界に飛び出していく終盤の描かれ方は素晴らしく、ラストの”ルーム”との決別と希望に向かう明瞭なメッセージは胸が熱くなります。

”ルーム”でオールドニックに貰ったお気に入りのラジコンを壊すジャック。
ラストで「ママもさよならして」とひとり歩き出すジャック。
子供ながらにはっきりと示すジャックの”決別”の意思表示が、目が醒めるほどに力強い。

それにしてもジェイコブ君。これからどんな役者さんになっていくのか。末恐ろしいですね。
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