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ノーザン・リミット・ライン 南北海戦のmaverickのレビュー・感想・評価

4.1
2015年の韓国映画。実話を基にした海洋戦争アクション映画で、本国で600万人以上を動員した。


本作は2002年6月29日の日韓ワールドカップの真っ只中で起きた、北朝鮮と韓国の艦艇同士の銃撃戦を映画化したものである。日本も韓国もお祭り状態で浮かれていた時に、こんな恐ろしい事態が起きていたわけだ。北朝鮮側が領海を侵犯したことで起きた事件。日本も他人ごとではなく、この事実は知っておくべきだと感じた。

事件の当事者である韓国軍の哨戒艇クルーにスポットを当てた物語となっており、一人一人に感情移入出来るように作られている。彼らが普段どのような環境下に置かれているのかを理解させ、事件がどういう流れで起こったかを丁寧に描いてある。海の男らしさに溢れた話で、じーんとくる。『シークレット・ミッション』のイ・ヒョヌ、『母なる証明』のチン・グ、『ウンギョ 青い蜜』のキム・ムヨルらが、魅力的なキャラクターを演じる。みな体格も良く、まさしく海の男という感じで好感持てた。

映像が少々古臭く感じるが、丁寧なドラマで引き込まれる。中盤からは戦闘シーンが続き、緊迫感が半端ない。戦闘シーンは迫力があって良いのだが、見せ方にもっと工夫が欲しかった。撃たれて倒れるの繰り返しでワンパターン。それがずっと続くのはさすがにキツイ。軍艦は本物を使用したのかCGなのかは分からないが、チープさは無くリアルな戦闘シーンは演出出来ていた。ただ、感動のドラマを意識しすぎかな。あれだけ撃たれてまだ意識があるのはさすがに無いかなと。そういうお涙頂戴な演出よりも、実際の映像やインタビューのシーンの方が泣けたから。後半は盛り上げようとして空回りしている印象だったな。


当時、韓国ではワールドカップの話題ばかりが盛り上がり、この事件のことは国民の多くが関心を持たなかったらしい。戦争にも突入しかねない大事件でありながら、政府も表沙汰にせずに穏便に処理して事件は風化した。だが映画化されたことで、事件は人々の目に触れられることとなる。韓国で600万人を動員し、事件を知らなかった人にも大きな関心を与えた。これが映画の力である。自分も本作をきっかけに、この事件を知ることが出来た。こういう事件に無関心でいることは良くない。平和の尊さについてもしっかり考えさせる話。良き作品であった。
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