skm818

帰ってきたヒトラーのskm818のレビュー・感想・評価

帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)
3.8
なんていうか笑えない。部分的には可笑しいところもあるのだが、全体としては乾いた笑いという感じ。作る側もギャグ映画として作ってるわけじゃないだろう。
何らかの謎の力で2014年のベルリンで目覚めたヒトラーが、テレビ番組を利用して(頭のいい彼はまず新聞や雑誌で情報収集をして現状把握につとめるのだ)国民の声を聞き政治的主張をなしていく。周囲の人も視聴者も皆彼をヒトラーのパロディ芸人だと思って面白がり、彼は人気者になる。
芸人の冗談だと思ってるから皆あんなに面白がれるんだよなあ。きわどいジョークは皆大好き。実際移民問題などで政治に不満を持っている人も多い。そういう人たちにとってヒトラーの主張は一種のガス抜きになっているのだろう。
もちろん全員が面白がってるわけじゃなくて、中にはこれはよくないと感じている者もいるが、面白がる空気の中では強く主張できない。認知症で現状がよくわかってないおばあちゃんだけがはっきりと彼を憎んで罵る。この辺はだかの王様の逸話を思い出した。
この時の彼の反応(おばあちゃんの怒りに共感せず彼女とその孫娘がユダヤ人であることばかり残念がる)を見たカメラマンがようやく何か変だと気付き、調査の結果、彼が本物だという確信を抱くが、そのときにはもう…という話。
こういう映画がドイツで作られてるのがすごいと思う。もはやタブーが一回まわっている感じ。
ヒトラーのユダヤ人に対する感情って、いわゆる偏見レベルではないんだよな。人間だとは思っていない。邪魔だから出て行けという排外主義者によくあるレベルではないのだ。そのことがユダヤ人について語る台詞の端からうかがえて恐ろしかった。
あと、ワタクシといたしましては、大嫌いな菜食主義だのエコロジーだのがナチ的なものと親和性高いらしいということがわかったので溜飲が下がりましたことよ。
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