ピロシキ

メッセージのピロシキのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.7
マックス・リヒターの"On the Nature of Daylight"をバックに重々しく幕を開けた物語は、その開始地点へと還って静かに幕を閉じる。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の新作は、アッツアツの泥臭い前作「ボーダーライン」とは対極に位置する、とんでもない熱量の低さだった。祭りで売ってるフライドポテトみたいな形の超巨大物体が世界中にいくつも現れるという非常事態。しかし(スティーブン・スピルバーグやローランド・エメリッヒの作品にありがちな)、破壊される街や逃げ惑う人々といった、パニック要素は皆無だ。それどころか、事の重大さを理解しているのかと問いたくなるほど、ウソみたいに落ち着き払った、暗い人間ばかりである。

地球規模(もしくは宇宙)のマクロなテーマを通して、一人の女性のミクロな葛藤を描くというのは「ゼロ・グラビティ」とよく似ている。この作品もまた、単純にSF映画とよぶのではなく、むしろヒューマンドラマに分類してしまいたい。そのぐらい心を揺さぶられた。美しかった。

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邦題がArrivalのままとかメッセージになるとかはこの際どっちでもいいのだが、最後に一つ付け加えるとすれば、この映画における最大の功労者のひとりは紛れもなく、ヨハン・ヨハンソンである。サントラだけでも聴きまくりたい。(追記: そして地球は、そんな尊い才能を早くも失ってしまった...合掌)
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