のら

キングコング:髑髏島の巨神ののらのレビュー・感想・評価

3.5
キングコング自体は何度もリメイクされている映画で、本作はギャレス・エドワーズ版のゴジラと世界観を共有しており、話としてはゴジラの前日談という作りになっている。

ストーリーは人工衛星が実用化された 70年代初頭に、南太平洋上に未踏の島を発見し、トム・ヒドルストン以下登場人物たちか調査の為に島に乗り込むとそこは恐るべき怪獣達が住む島だったという内容で、展開的には 1作目のキングコングを踏襲している。

なにより本作の最大の特徴はベトナム戦争終結直後を舞台としているために全体的な画作りが地獄の黙示録やプラトーンといったベトナム戦争を題材にした過去作を連想とさせ、そこに怪獣達が人間に牙をむくという展開は映像的にも面白い。

序盤で編隊を組んだヘリ部隊がコングと遭遇するシーンは地獄の黙示録を連想させるし、ジャングルの中で怪獣達に狩られていく人類はプレデターのようでもあるが、ベトコンのゲリラ攻撃に苦しめられる米軍を描いたプラトーンを思い出させる。特に竹林の中で蜘蛛の怪獣に襲われるシーンは人類が踏み入れては行けない場所に入った事を端的に表現していて良いし、兵士たちのメンタルが消耗していく姿も説得力あってよい。

また怪獣達が戦争映画でお馴染みの英雄的な行為を無慈悲に跳ね除けていく姿も面白い。その一方で原住民の表現や主人公たちとの関わり合いがステレオタイプというかあまり話に関わってこないし(これは次回作への伏線も兼ねている)原住民達が作った木製の壁もコングが協力していたとしても、ちょっとオーバースペック気味で疑問が残る。

またサミュエルL・ジャクソンのキャラクターがちょっと理解不能で、ベトナム戦争が負けという形で終わり、部下の死が無駄では無いとそこに意味を見出そうとするのは分かるが、ちょっとコングへの執着が異常で感情移入しにくいまたこれは本作というよりもキングコング自体の問題ではあるが、ゴジラと違いキングコングには決め技がないためクライマックスでの盛り上がりに若干かける。

とは言え本作はベトナム戦争や冷戦を扱ったオマージュに富んでいるだけでなく、ラストで流れる We'll Meet Again でゴジラが存在する世界に置いてのキングコングの役割を暗示するなど、怪獣がいる世界と上手く調和させている。怪獣映画としても平均点以上な出来なだけでなく、冷戦物の映画としてもよく出来た作品に仕上がっている。
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