ブロックバスター

バジュランギおじさんと、小さな迷子のブロックバスターのレビュー・感想・評価

4.5
“正直者は馬鹿を見る”というが、果たしてそれは本当なんだろうか。

主人公のバシュランギおじさんの奮闘ぶりを見ているとこの常套句が本当なのか、疑問に思えてくる。
バシュランギおじさんは、ヒンドゥー教のお猿さんの神さま・ハヌマーンを厚く信仰する典型的なインド人。
「ハヌマーン信者は、コソコソしない」がモットーのバシュランギおじさんは、馬鹿が付くほどの正直者。
そこへ、異教徒であるパキスタン人の女の子シャヒーダが迷い込んでくるから、さあ大変。
声を発することができないシャヒーダと、身振り手振りで心を交わそうとするバシュランギおじさんの姿が、なんとも微笑ましい。
いやむしろ、言葉を交わし合えない相手だからこそ心の絆が強くなり、シャヒーダを遠い故郷に戻してあげようという気持ちになるのかもしれない。

バシュランギおじさんはシャヒーダとの出逢いを経て、いちハヌマーン信者から成長を遂げてより寛容で博愛的な存在になる(しかし、「ハヌマーン信者はこそこそしない」という信条は捨てない)。
インド・パキスタンの国境で、銃を持ち監視を続ける警備隊に対しても、バシュランギおじさんは丸腰で対峙する。
彼らから暴力を振られても、国境を越えさせてほしいと懇願するバシュランギおじさんの様子は、まるで「非暴力・不服従」を唱えたガンジーのように気高い。
その後パキスタンに入国を果たした後も、バシュランギおじさんとシャヒーダのピンチは続く。
でも、逆境にある2人を手助けするのは、敬虔なムスリムたちだった。
バシュランギおじさんは当初、モスクに入ることも躊躇していたが、徐々にムスリムたちから受けた親切に心を開いていく。
シャヒーダが両親の元に無事帰れるように、バシュランギおじさんがアッラーの神に祈り涙するシーンは、とても感動的。
そして、バシュランギおじさんとシャヒーダ一行の様子は全国的に注目を集め、インドとパキスタンの硬直状態に雪解けをもたらす…。

愛おしい存在のためなら、国境も宗教も超えられる。
エンディングで描かれた民衆の様子は、ハッピーエンドにしては“トゥーマッチ”すぎて、本当に涙が止まらなくなる。