ブロックバスター

ラストナイト・イン・ソーホーのブロックバスターのレビュー・感想・評価

4.7
「題名にソーホーと付いているから、ニューヨークの話かな?」というくらい、何の前情報も入れずに見た私(※本作は同じソーホーでも、ロンドンのソーホーの話です)。それなのに、劇場で見終わった後、椅子から立ち上がれなくなってしまった。「えーーーっ!!!なんかすごい私の好みにハマってて、良かったんだけど…!」と、固まってしまったのだ。

公式HPの言葉をそのまま借りれば、本作は「<夢と恐怖がシンクロする>タイムリープ・サイコホラー。」物語は60年代のレトロファッションに憧れる主人公のエロイーズがロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(ファッション芸術では名門校)に合格し、ロンドンに上京するところから始まる。

でも寮のルームメイトは親切そうに見えてめっちゃマウントを取ってくる系のビッチ(ちなみにこのマウントの取り方がなかなか意地悪で逆に面白い)!おまけに夜中に部屋に男性を連れ込んでしまうくらい迷惑野郎だったので、エロイーズは寮からの引っ越しを決意する。そして見つけたのは、古い家の屋根裏部屋。レトロなものが好きなエロイーズは早速部屋を気に入るが、引っ越して最初の夜にまるで60年代にタイムリープしたかのようなリアルな夢を見る…。

ここまでのストーリーの面白さ、展開の速さはかなり私の好みのテンポで、ついつい映画に惹き込まれってしまった。そして何より、エロイーズが60年代を追体験するシーンがかなり画期的!素敵なナイトクラブに通されたエロイーズは、フロントマンから「コートをお預かりしましょうか?」と問われ、あら?あたしコートなんて着てたかしら?とエロイーズが鏡を覗くと、そこには自分の姿ではなく60年代のイケ散らかした女性サンディが映ってるのだ!

サンディを演じるアニャ・テイラー=ジョイが登場した瞬間は「IT GIRLだ!」と心の中で叫んでしまった。今人気の俳優さんに多い三白眼(白目が大きい目のこと)のアーモンドアイに、スッと伸びる鼻筋に、細いフェイスライン!!(飽くまで個人的な意見ですが)もう全てが完璧だった。彼女が劇中に登場した瞬間から映画の雰囲気が変わってしまうというか、恐ろしい女優さんだ。完全に私の負けです、もう一目惚れしてしまいました(Netflixのドラマに出演してるんですね、こうなったらもう全力で見ますよ)

そんな60年代のイケ女の人生を追体験してしまうのだ。エロイーズだって夢中になってしまうのは当然だよ。この日を境にエロイーズはリアルライフを置き去りにする勢いで、60年代を生きるサンディの追体験にのめり込んでしまう。一方のサンディもナイトクラブの歌手になる目標を実現し、素敵な彼氏のジャックがマネージャーになってくれたりと、嘘みたいに夢が叶っていく。

順風満帆に見えたサンディの毎日だったが、あれれ?どんどんサンディが描いた夢とはかけ離れた展開が襲ってくる。歌手としての才能を見込まれて入ったハズのナイトクラブは、実は露出度が高い服装で男性の相手をしなければいけない“いかがわしい店”だったのだ。そしてサンディも嫌々ながらに男性たちの相手をさせられる。「私はこんな下らないことをするために、ロンドンに来たんじゃない…!」そうもがきながらも運命に逆らえないサンディと同じく、エロイーズも「サンディの追体験」から抜け出せなくなってくる。というのも、夢から醒めなくなってくるのだ。そして徐々に夢で体験してきたサンディの世界が、エロイーズの生きる現実を浸食していく…。

サンディを苦しめた幾人の男性の亡霊たちがエロイーズの目の前に現れるシーンは、もう普通に怖かった、ひーーー泣。余談だが、「呪怨」や「リング」などのジャパニーズホラーで育った私だったが、あの演出は怖い!怖すぎて映画館で「こわっ!!」と大きな声を出してしまった(周りに座っていた方々、本当にごめんなさい)。

そして次第に正気を失ってしまうエロイーズだったが、ここで「呪い殺されてしまう悲劇のヒロイン」で終わらせないのが本作の良いところ!報われなかったサンディを救うべく、過去に起こった出来事を追及していくエロイーズの姿は「運命を自ら切り開く現代の女性像」を表現しているようで、かなり共感できた。

果たしてエロイーズは過去を生きるサンディを救えるのか。「これからどうなるの!?もっともっと続きが見たい!!」と思わせる展開の速さで、かなり!かなり面白い。前作の「ベイビー・ドライバー」も良かったけど、演出方法やテンポの良さは、本作の方が段違いで良かった。一人で見ても勿論おもしろいけど、友達をきゃーきゃー言いながら見ても楽しいかも。是非是非オススメでした!