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生きてるだけで、愛。のブロックバスターのレビュー・感想・評価

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
4.0
【激エモ注意】
本当の自分じゃない自分を生きてる人、自分で自分のことを褒めてあげられない人が見たら、かなり刺さってしまう内容だった。

自称うつ病の寧子は、ゴシップ誌で編集者をしている津奈木の元に転がり込み、1日中何もせずダラダラ過ごしている。

冒頭では、寧子が「自分はうつ病だから、何もできないんだから!」と津奈木に感情的に喰ってかかるシーンが多いため、見ていて「うわぁ…、メンドくさい女。」と、全く感情移入できなかった。
しかし津奈木の元カノが、ストーカーとなって寧子の目の前に現れた時、寧子の堕落した日常が一変する。

寧子は自分を立て直すために奮闘するが、引きこもり期間が長かったせいでなかなか思うようにことは進まない。
ハンバーグを作ろうと思ったけれどスーパーでひき肉すら買えなかったり、せっかく行為で入店できたカフェバーのバイトも仮眠のせいで寝過ごして出勤できず、目覚まし時計を片手に呆然としてしまったりと、寧子はあまりにも生活力がなく不器用だ。
そんな寧子の空回りを見ながら、つい「ああこれは、私みたいだ」と思ってしまった。

寧子は普通であることを”装って“カフェバーのバイトをこなす。
でも寧子がいくら頑張っても、いくら普通を”装っても“、周囲にはそれが悲しいくらい”見透かされて“しまう。
そんな時、寧子は自分にがっかりしながら、こう呟く。
「あー、生きてるだけで、どうしてこんなに疲れるんだろう…。」

誰にだって、格好悪い自分に押しつぶされて、息もできず苦しくなる経験はある。
でも多分、私も含めみんな、格好悪い自分に目を背けたり、自分を飼い慣らしながら生きてる。
一方で寧子は、身体の全てをアンテナみたいに尖らせて生きているから、格好悪い自分を含め、自分の全てを無視することができない。それどころか、振り回されてしまう。
時折自分を抑えることができず奇行に走る寧子を、彼氏である津奈木は見守る。
だって津奈木にとっては、寧子の理解できない行動すら愛おしいのだから。

自分が誰かにとって「生きるてるだけ、愛」であること。
又は、自分にとって「生きてるだけで、愛」な誰かこそ、正気と狂気が紙一重で同居する世の中で、拠り所になる存在なんだと思った。

【余談】
主演の趣里、すごいぞ。助演の菅田将暉の存在が薄れるくらい、迫真の演技。
「お父さんとお母さんが有名人だから」というある意味のマイナスイメージは、今作で払拭されたと思う。