秋日和

ヨーヨーの秋日和のレビュー・感想・評価

ヨーヨー(1965年製作の映画)
4.0
ジャック・タチは勿論のこと、フェリーニ(『道』と『8 1/2』)、マルクス兄弟(『吾輩はカモである』?)、チャップリン(『独裁者』)等に目配せをしながら此処彼処でサーカス=見世物を繰り広げていくエテックスの傑作。楽しさが弾けるようなカラー作品『大恋愛』とは違い、本作はコメディではあるけれど何処か寂しい雰囲気を漂わせている。
サイレントからトーキーへ映画が移行したように、本作は父から子へと主人公の座が譲られる。そのどちらをもエテックス自身が演じている為、当然のことながら容姿はソックリなのだけれど、「あ、二人って親子なんだな」と思わせる描写が他の面でも見受けられたのが嬉しい。それは何かというと、「写真を見つめる」という些細な行為の反復だったりする。この映画に於いて写真は<ある場所>から<別のある場所・人>に思いを馳せるアイテムとして機能していたように思うのだけれど、巡業を余儀なくされる運命にあるサーカスと相まって、とても素敵な演出だったように思った。「楽しい」を色々な人に送り届ける為に、自らが「寂しい」を背負っているかのようで。
とは言え、中盤に見られるアクロバティック(!)なキスシーンは最高以外の何物でもないし、枠(フレーム)を見事に用いたギャグの数々は流石だと感じた。フィルメックスを良い機会に、エテックスの作品がもっと観られるようになると良いな。
秋日和

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