ベルサイユ製麺

ビニー/信じる男のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

ビニー/信じる男(2015年製作の映画)
3.5
監督、ベン・ヤンガー!あの『マネー・ゲーム』の!と思ったら、観てなかったです、その映画。『マネー・ボール』と勘違いしちゃった。てへ♡(と舌を噛み切る)

マイルズ・テラー!あの『セッション』の!流石に観てまーす。正直言ってまあまあ冴えない外見だと思うのですが、コレがもう凄く良い。憑依型なのですね。jazzmenもboxerも、本物っぽい凄みが漂ってます。どちらも人種としては破綻型では有りますね…。
格闘技は意外と嫌いな方でも無いのですが、ボクシングはよく分からなくて(オタクにありがち)、今作に出てくるロベルト・デュランはギリで知っているのですが、主人公ビニー・パジェンサの事は全く知りませんでした。この人のストーリーがもう、とにかく壮絶です!掻い摘んで言えば〈キャリアの絶頂期に事故で首を骨折。医者からは歩けるかどうかすら疑問視されながら、奇跡の現役カムバックを果たして…〉というか感じなのですが、字面で見ると「へぇ」くらいの感慨しか湧かないこのお話も、迫真の演技と丁寧な描写の積み重ねで見せられると、本当に奇跡を目の当たりにしているように思えて来ます。
劇中に登場するハローベスト(ハロプロのベスト盤では無いですよ!骨折までは治りません!)という器具が有るのですが、ラグビーの防具みたいな形状の硬質素材のベストから突き出た金属フレームに頭蓋骨をビス留めするという凶悪にシンプルなもので、確か元女子プロレスラーの北斗晶さんが試合で首を折られた時に付けていたヤツだと思うのですが(オタクにありがちな偏った知識)、装着時の拷問感と装着しての生活のストレスフルな感じに完全に心がやられます。花粉症とかでグダグダ言うのが申し訳なくなりますね…。
普通の感覚でしたら椅子に縛り付けてでも、女房を質に入れてでも復帰を拒むところですが、ビニーの狂気に絆されて周囲も徐々に復帰をバックアップするようになっていきます。この、なんというか、ボクシング周辺の人間の独特のヤバみも物語にコクを与えている。というか、はっきり言ってボクシング界隈のホモソーシャル感が、見ちゃダメなものを堂々と見ているみたいで“イイ”んです…。
尋常ではない熱狂状態の中迎える復帰戦、その結末は恐らく『レスラー』の様な悲劇…と思いきや。ここが個人的な一番の驚きでした。事実は小説より奇なり!神様はドラマの定石が分かってない様だから、スピルバーグとかちゃんと観て欲しい。まあ、観終えて見ると、意外と深く考える様な複雑なテーマは無いので、シンプルにやる気を出したい時などにピッタリだと思います。おススメ!

蛇足というか、捨て置けないので書きますが、俯瞰での自動車の追突シーン。コナミ社のビデオゲーム『ロード・ファイター』そっくりなのです!完全一致。ホントにワザとなんじゃないかな?
…実はわたくし、オールドゲームには少々興味がありましてね…はぁはぁ(オタクにありがちな共感出来ない情熱)