イライライジャ

ビジョンのイライライジャのレビュー・感想・評価

ビジョン(2015年製作の映画)
4.4
こんなド傑作がnetflixに何食わぬ顔で配信されているのは逆に勿体ない。今すぐ劇場公開や円盤化すべき重厚なインドサスペンス。
主演のアジャイデーヴガンは2000年の映画を観たことあり、そのときは魅力を感じなかったけど歳を取ることによって魅力が増すタイプの俳優だと思った。すんごいわ、表情だけの演技がすんごいわ。

妻と娘2人と仲良く幸せに暮らす主人公、(この娘2人という時点で嫌な予感はするが)、主人公は常に正しい人間ゆえに人望があるのだが、正義感が強いので汚職警官にまで楯突く性格をしている。
ある日、長女が若い男に入浴動画を撮られてしまい脅されてしまう。長女と妻はなんとかスマホを取ろうと取っ組み合うと誤って殺してしまい、パニックになりながら庭に死体を埋める。帰宅した主人公は男の車を遠くの湖に沈め、スマホも捨てる。
だが、実はこの男は警察官の長官の息子だったのだ。
家族はすぐ疑われるが、完璧なアリバイを用意する。


確実に犯人は主人公一家ということもわかっている状態で展開していくなか、ここまで面白く作れることに感動。観る者も騙されるほどの見事なアリバイ工作。
しかし、息子が行方不明になった長官夫婦も絶っっ対に引き下がらない。いや、母の勘は絶っっっ対に犯人はこの一家だと疑って止まない。
そして、不運にも以前主人公が楯突いた警察官が事件を担当するので、なんとしてでも嫌いな主人公を逮捕したい。だがどんなに拷問を受けても完璧に犯人ではないと言い通す主人公一家。

この、誰も譲らないしお互い絶対に譲れない状況でどう展開していくのか、ハラハラしっぱなしで時間を忘れる。

「家族を守るための手段に善悪はない」という言葉、これお互いがそう思っている分どっちに転んでもやり切れない気持ちになる。
こんなに正しく生きてきた人間が、悪を隠してやり遂げるのは相当の覚悟がいる。でもそれも家族への愛ゆえ。
家族を守るためだったら、家族にも隠し事をしてでも死ぬまで家族を守り通す。

素晴らしいストーリーにボロボロ泣いてしまった。
それにしてもタブーは相変わらず悪い女を演じると光りまくるしインパクトが凄い。


本作はマラヤーラム映画のリメイクで、タミルでもリメイクされているとのこと。