むさじー

アノマリサのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

アノマリサ(2015年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

<R15指定アニメで描く”中年の危機”>

ストップモーションアニメで、R15指定で、“中年の危機”を描くというという超異色作。
人形を1コマずつ動かして撮影し、つないで動画を作っていくわけだが、その表現は極めて繊細でリアル。
メイキング映像を見ても、この技術と根気は凄い。
トイレの場面など生活感あり過ぎで、実写なら退屈してしまうが、どうでもいい行動をカットすることなく見続けるうち、観客も主人公に同化しながら、彼の世界に引き込まれていく感じがする。
自分以外の人間が全て同じ顔、同じ声に聞こえてしまうというのは、一種の鬱症状だそうだが、マルコムの場合、自分にとって重要で必要な人間は「例外的」に別の顔と声を持つ「人間」として存在するようなので、単なるエゴイズムの裏返しのようにも思えてしまう。
人形を使っていながら、どこまでも人間くさいドラマに仕上がっている。
想像以上に重く、そして骨太だった。
それにしてもラストシーン、口から液体を出す芸者人形と、美しい声でうたう「桃太郎」の意味はどう解釈すべきか。
実はリサはマイケルの妄想で、昨夜のマイケルの相手は人形だったのでは?「桃太郎」も何かセクシュアルな意味合いを持つのでは?
謎解きや深読みを誘う、奥行きとパワーのある映画だった。
むさじー

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