Nasagi

光りの墓のNasagiのレビュー・感想・評価

光りの墓(2015年製作の映画)
4.4
タイの至宝アピチャートポン・ウィーラーセタクン監督作
4回観ても半分も理解できた気がしない笑 ただ、観る分にはとても心地の良い映像。

回転のイメージで表現される独特の世界観
輪廻転生だけじゃなくて、有機物が循環するエコシステム、エネルギーの運動によって形成される宇宙観、夢と現実の境を見失って溢れ出してくる意識の動き、みたいに色んな角度から捉えられる。

画面で起きていることはシンプルなんだけど、観客の想像力を利用してシンプルな演技に重層的な意味をもたせている。

「訓練」というのがひとつのキーワードになっていて、それは軍隊的なものとの親和性も感じる。
監督が単純にスピリチュアルなものを非難しているわけではないと思うのだけど、所々で現代人の健康志向、というか健康信仰が皮肉られているように見える。
なのでやっぱり軍隊と信仰それぞれに対して「目を覚ませ」と言っているのかと思う。
ただ「地獄や天国を信じるな」と言っている人が代わりにすすめてくるのが、思考のはたらきを「訓練」する瞑想であるなど、宗教⇔科学の西洋的パラダイムでは捉えきれないのも確か。

とても難解だけど、仮説を持って挑めば応えてくれるし、もっと勉強すればもっと多く応えてくれそうなすばらしいテクスト。
Nasagi

Nasagi