しゅん

ロートリンゲン!のしゅんのレビュー・感想・評価

ロートリンゲン!(1994年製作の映画)
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12月のアテネフランセのトークで持田睦さんが「カトリックの教会はたくさん映っているが、プロテスタントの建築物が実は全く映っていない」と語っていた『ロートリンゲン』。持田さんがストローブ本人に尋ねたら「意識していない」と言われたそうだが、普仏戦争で土地を追われたロレーヌ地方(ドイツ語でロートリンゲン)の人々についてのテクストが基になっていることを考えれば十分にあり得る、というか意識しているだろう。

高台から森と街をパンしながら映していく、ストローブ=ユイレ特有のショットが幾度も登場する。静的な映像の中では森のざわめきや鳥の飛行やごくたまに通り過ぎる赤や緑の車の移動がやけに印象に残る。街中のカーブする道と建物に入っていく二人の男が映るロングショットでは、教会(たぶん)に落書きされたピースマークの落書きが陽射しに照らされている。「わたしはドイツ人にはなりません」とセリフを口にする女の横顔。記憶に残っているシーンを羅列しているだけなのだが、映像全体が静的で穏やかな世界に統一されていることと、冒頭近くの血塗られた地図の映像に対してハイドンの弦楽四重奏と大砲の音が重ねられて暴力が強調されていることには対比関係があって、おそらくこの対比はストローブ=ユイレ作品全体に現れるものだろう。
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