しろくま

恋妻家宮本のしろくまのレビュー・感想・評価

恋妻家宮本(2017年製作の映画)
3.6
《これからは二人きりだし仲良くしないとね》
〝そうだ。一つ約束しない?これからはお互い「お父さん」 「お母さん」じゃなくて名前で呼び合うの〟〝えっ何で?〟〝だって正が結婚して私達だけしかいないのよ〟

若いカップルのキュンとするラブストーリーもいいけど、長年連れ添った夫婦の日常を描いた作品もいいなあということで、今回は、結婚をした一人息子が我が家を去って二人っきりになった夫婦のお話。

〝これからは二人きりだし仲良くしないとね〟って言っていたので、心が温かくなるようなほんわかした話になるって思ったら…。まさかの熟年離婚の危機?

本棚の〝暗夜行路〟の本に挟まれていた離婚届を見つけた宮本陽平(阿部寛)。妻の欄には署名と捺印がされていて大慌て。妻の美代子(天海祐希)に問いただすこともできず悶々と時が過ぎ…。気になって再び本を開いたら離婚届が無くなっていて…。なぜ妻は離婚届を書いて隠し持っていたのか。それを持ち出すってどういうこと?まさに〝何かあったのか劇場〟の幕開けって感じ。これってサスペンス?

寝室をうろうろしてベットに座り、本を開いて〝若い二人の恋愛がいつまでも続くと考えるのは一本の蠟燭が生涯灯っていると考えるようなものだ〟と〝暗夜行路〟の一節を読んで〝確かに〟とつぶやく。いやいや、感心している場合じゃないって。〝落ち着け。宮本陽平〟。

ただ本作では紹介していないけど、実は〝暗夜行路〟の本には続きがあって〝「しかし実際そうかしら?」(中略)「なるほど最初の蝋燭は或る時に燃え尽されるかも知れない。しかしその前に二人の間には第二の蝋燭が準備される。第三、第四、第五、前のが尽きる前に後々と次がれて行くのだ。愛し方は変化して行っても互に愛し合う気持は変らない。蝋燭は変っても、その火は常澄明のように続いて行く」〟と書かれている。和蝋燭は短くなると蠟燭の穴に新しい蠟燭を突き刺すことで、ロケット鉛筆の様に新しい蠟燭の芯に火が引き継がれ灯り続けるってことね。そこを読み飛ばすなんて、中学校の国語教師なのに〝どうした。宮本陽平〟。

熟年離婚の危機に加え、学校でも料理教室でもごたごた続きで前途多難な展開だったけど、ラストシーンの駅の構内で一本の蝋燭がグッジョブ。すれ違った二人の心に愛の火を灯すことができるのか?〝がんばれ。宮本陽平〟。

視聴メモ:2023.11.21/174/図書館🅼DVD
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