こたつむり

ミュートのこたつむりのレビュー・感想・評価

ミュート(2018年製作の映画)
2.9
♪ 輝く星さえ見えない都会で
  夜空に終わりを探し求めて

ダンカン・ジョーンズ。
デヴィッド・ボウイのご子息であり『ミッション:8ミニッツ』などの傑作を手掛けた監督さん。今後が期待される気鋭が描いた最新作がこちら(と言っても2017年の作品ですけどね)。

ということで。
ネトフリに加入したら是非とも観たい作品…でしたが。

うーん。
『ブレードランナー』っぽい世界観は良いし、どこか“切なさ”を感じさせる筆致は最高なんですけど…脚本が弱いのか、全体的にまとまっていない感じがするんですよね。

特に主人公の背景が活きていないのは致命的。
アーミッシュの出身であること。そして、宗教的な理由で手術を拒んだために話せないこと。この辺りがキーポイントだと思うんですが他のキャラクター(逃亡中のアメリカ人二人組)のほうが印象深いんです。

また、中途半端なミステリ要素も微妙。
愛する彼女が失踪したので主人公が捜す…という物語の骨格は良いんですが、彼女に対する想いの“根底”が見えないんですよね。

そして、その代わりに浮かんでくるのが失踪した“理由”の方。ぶっちゃけた話、主従関係が逆転しちゃっているので、バランスが著しく悪いのです。

だから、とても勿体ないんですよ。
表層は限りなく傑作に感じますからね。
不遜な物言いかもしれませんが、監督さんは脚本を手掛けない方が良いのかも。考えてみれば『ミッション:8ミニッツ』も監督を務めただけですからね。

まあ、そんなわけで。
某有名SF映画(って既に名前を出していますが)のパクリ…ではなく、精神的に敬意を払って構築された作品。雰囲気は格別なので“目で楽しむ”…そんな割り切りがポイントだと思います。

あ。それとも。
タイトルにある『MUTE』は話すことが出来ない主人公のことではなく。観客に対して「口を閉じろ」と言いたいのかも…なんて、それは流石に嫌味すぎる考え方ですね。てへぺろ。
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