ohassy

ミッション:インポッシブル/フォールアウトのohassyのレビュー・感想・評価

4.0
「そして伝説へ、史上最強のアクション俳優」


トムの作品を観るときの座席は決めている。
F-14。
そう、トムキャットだ。
比較的大きめなハコでないと見にくい席になってしまうし、当然埋まってしまうこともあるので、映画館選びは気をつけたい。
今回は日比谷でミッションコンプリート。

前作のローグネイションでスパイ映画の頂点を極めたシリーズの最新作は、はじめて明確な続編として作られているので、是非前作を観てから鑑賞していただきたい。
ローグネイションはアクションもさることながら、チームワークにより勝利を掴むMIらしさと、先の読めないストーリー、そしてなんといっても鳥肌が立つほどスカッとするラストを堪能できる素晴らしい作品なので、決して損はしないと思う。

それに対して本作はといえば、これはもうアクションの頂点を極めた「超やりすぎ映画」と言っていい。
トムが妄想するアクションを、監督以下全てのスタッフが一丸となって苦労に苦労を重ねて実現している様子が思い浮かぶ。
全部本人がやると言って聞かないのだから、周りの人たちは生きた心地がしないだろうな。
自分で製作して自分で主演を張っているんだから止められる人もいないし。
いろんな作品に出ているから気づかなかったけれど、トムは今や当代きってのアクション俳優なんだ。
この勢いだとTOPGUN2は戦闘機を操縦しかねない。

本作はおそらく、HALO JUMPやヘリの操縦など、やりたいアクションがまずあって、そこからストーリーを作っていったのだろう。
そもそもパーティーに行くのにHALOJUMPは必要ない、普通に入れる。
アクションからストーリーを作る代表といえばこれまではジャッキーチェンがいたのだけれど、そのお株を完全に奪った形だ。
年齢を考えれば、ひょっとしたらジャッキーをも超えているかもしれない。
そのくらい無茶をしている。
骨折だけで済んだのが不思議なレベルだ、そもそも主演が骨折しちゃいけないけれど。

そんな無理をして本人がやらなくても映画は成立するだろうと思う一方で、やはり本人でない場合はなにがしかの誤魔化しをしなくてはならない。
アクションの達人がやれば身体能力的な見応えは得られる一方で、どうしても本物の凄みとはトレードオフになる。
僕なんかは特にそうだけれど、もはやMIシリーズは「イーサンハント」じゃなくて「トムクルーズ」でいいじゃんって思うくらいトムクルーズなので、彼が無茶するのをハラハラしながら楽しむような心持ちになっていて、本人がやればやるほど楽しめるという、なんだか映画なのかドキュメントなのかわからないことになっている。
ひょっとしたらサーカスを観ているのかもしれない。

でももちろん映画である必要はある、音だ。
毎回アレンジを変えて流れ出すテーマソングが本当に本当に本当に大好きで、1作目の公開時には今はなきシングルCDを買ってずっと聞いていた。
プロローグの一悶着が終わってタイトルシークエンスに流れ込む瞬間の曲の入りは、一番気持ちいい。
今までいろんなバージョンが作られていてどれも好きだけれど、印象に残っているのはMI2のLimp Bizkit版かなあ。
めちゃくちゃ大胆なアレンジには驚いたし、感動した。

ローグネイションに比べて、イーサンハントという人間に焦点を当てた本作は、ミッションをクリアすること以上に、仲間や罪のない人々を犠牲にしたくないという「ヒーロー」としての姿が描かれている。
たとえ数千万人の命がかかっていようと、目の前の、助けられる1人の命を優先するのがヒーローだ。
その思いが時に自らやチーム、世界を窮地に陥れてしまうわけで、その狭間でどうする?というところ。
ではあるけれど、やっぱり観るべきはアクションで、寄せては返す大波のように次々とやってくるアクションシーンに、ただ身を委ねればいい。

個人的なトムファン視点としては、MIシリーズでは定番となった「トムダッシュ」がたくさん観られて幸せでした。
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