バナバナ

ニセ札のバナバナのレビュー・感想・評価

ニセ札(2009年製作の映画)
3.6
1950年に起こったニセ札「4-5号事件」の映画化。

出演者皆が関西弁なので関西で起こった事件なのかなと思ったら、発生は山梨県。
どうして学校の先生がこんな事件にかかわったのかというと(映画の中では、)中心人物の村の名士が元帝国陸軍大佐で、満州で国家を挙げてのニセ札造りに携わっていた、という人物。
こんな人に説得されたら、「私もやっちゃおうかな…」と思うかも。

私が面白いと思ったのは、教頭先生の賠償美津子は精巧な印刷機を購入する為の資金集めをする担当だったのですが、村の名士(お坊さんなど)ほとんどに声を掛けるんです。
そして、そこから話が漏れていき、貧しい村の奥さん達が「先生、私もその話に噛ませてください」と、小銭やヤギを持ってワラワラと集まってくるのです。
もう、村中の人が知ってるんじゃないの! という感じです。

これが、もう少し大きな村だったら、偏屈な人やすごく真面目な人も一人位は居るだろうから、とっくに警察に通報されていそうなものですが、村人の多くが印刷機を買う資金を出して、かかわっているんです。
捕まってから、「ニセ札造りは楽しかった」と先生は言ってましたが、他の村人の感覚も、盆踊りや運動会の準備を一緒に手伝いました…というのと同じ位にしか思ってなかったんじゃないでしょうか。

戦後しばらくは、自分が強盗に入っておきながら「戸締りはもっとキチンとしなさい」などと説教する説教強盗や、
強盗にもお茶を出してあげる人などが、たくさんいたそうです。
昔の日本人って大らかだったんだな…と思うのですが、これはそういう部分がよく出ている映画だと思います。

そしてその共同体に、元陸軍大佐の戸浦が連れてきた小笠原という男が、未だ軍人思想のままで、かなり異質な人物なのです。
板倉が演じていた役も、田舎の人にしてはかなり狡賢いのですが、破綻のきっかけが、この小笠原にあるところも面白かったです。

難を言えば、最初の方で、賠償美津子が高そうなスーツや、キラキラ光るイヤリングを付けていたのに、かなり違和感あり。
男性陣の服装も、戦後まだ5年しか経っていないのに、皆の普段着が一張羅の服みたいにシミ一つ無く、キレイだったのが不自然でした。

賠償美津子の息子役は、最初、堺雅人か? それにしては雰囲気かわったね? と思っていたら、青木崇高でした。
いつもより細く見えたけど、道理で野性味がある訳だ。
知的障碍のある青年の役を、とても見事に演じてました。

キム兄は、どこからこんな題材を拾ってきたのでしょうか。
ラストの裁判中の発言がちょっと鼻につくけど、本当に被告達はこの程度にしか思ってなかったから、こんな事件を起こしたんじゃないかとも思えたし、私は面白かったです。
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