Melko

ガキ帝国のMelkoのレビュー・感想・評価

ガキ帝国(1981年製作の映画)
3.5
「行ったろやないけ…ホープ会のおるとこ、、行ったろや……!!うるぁぁああ!!!!」

「チャボ、お前こんな連中連れて歩くんがそんなに楽しいんか?え?」

「お前こいつで十分やろ!いつもチョロチョロ引っ付いて歩いとるだけやないけ。金魚のフンじゃ!!」

明日を省みないヤンチャ坊主達の、喧嘩まみれ、超荒削りな青春。
たまにこうゆう汚い大阪弁話す映画が見たくなるんだよなぁ。

少年院帰りのリュウ。好戦的で喧嘩も強く、友達思いだが、どちらかとゆうと事勿れ主義。敵の攻撃を避けるのが得意で、パンチ/キック/背負い投げ等、大体どんな攻撃もできる。
リュウの悪友(もとい金魚のフン)チャボ。(発音はチャボ↗️)口数も血の気も多いが喧嘩はあまり強くなく、女や中坊のカツアゲが主なthe小物。得意技は、倒れた相手への蹴り(the卑怯)
リュウとチャボと連むが、元は一匹狼タイプのケン。在日朝鮮人。仲間想いで、喧嘩がめちゃくちゃ強い。得意技は頭突き。

リュウの少年院仲間のコウ。喧嘩はそこそこだが、打たれ強く、野心家。大阪キタを牛耳る北神会に入会、のし上がり、リュウ達と敵対することに。

ザッとこの4人がメインで動く話だけど、話の中身は、あってないようなもん。
大阪キタ(梅田界隈)を牛耳る北神会
大阪ミナミ(なんば界隈)を牛耳るホープ会
間に挟まれるリュウ、チャボ
孤高の日和見 ケン
という構図で、とにかく喧嘩、喧嘩、喧嘩……
女は添え物程度。だけどしっかり物語に絡んでくるし、濡場も脱ぎもあります。井筒監督作品だもの。

同じく喧嘩に明け暮れる若者を題材にし、朝鮮学校(からの部落差別問題)などを扱った「パッチギ!」と比べると、メッセージ性はかなり弱いように感じる。が、画面から伝わってくる熱気がとにかく凄い。
時代故か。とは言え、さすがに街中がどう見ても80年代のミナミとキタなので、キャストの身なりと髪型だけで1962年設定はちょっと無理が…と思うが、
有り余る若さと生き急ぐ感じ、命を余りに軽く見てる生き方と、
「群れなければ相手にすらされない」という、いつの時代の不良にも通ずる真理が描かれていて、なるほどな、と。

主人公は紳助なのだろうけど、この作品で光っていたのは竜介演じるチャボと、趙方豪演じるケン。
チャボの芯から小物で薄幸な感じと、ケンの群れないが友達のことは大事にする生き方、どちらも役がお互いに乗り移った感じがしていて、超自然だった。両名とも結構前に鬼籍に入られてるとは…。
ケンを演じた趙方豪は、当時立命館大学の演劇部研究生の新人。なのに紳竜相手にフレンドリーで対等に立ち回り、ホントの友達のように見えた。
メイン3人の生き方がそれぞれ異なり描き分けられてる点も良い。

収穫だったのは、コウを演じた升毅の完璧な大阪弁。東京出身の俳優なんだと思ってたが、思春期を大阪で過ごしてたのか。どうりで。あんな澄ました顔で淡々と大阪弁喋られたら…泥臭い人間しかおらん街では浮きますな。

暴力に暴力で立ち向かい続けては、終わりがなく、悪「ガキ」たちは悪い大人に利用され命を散らす。
ガキ達は縄張りを守り拡大しながら帝国を築いていく。明日には取り返される。なんとも儚い帝国。

ガキ達が皆揃いも揃ってスレンダー(どちらかとゆうと小柄)体型なのは、時代を反映しているようで、良いと思う。ガタイのいい不良が出てきたのなんて、つい最近な気がする。小柄な奴がキレると手がつけられないから、怖い。

この作品が時に井筒作品の中でパッチギよりも高評価されるのは、ラストシーンだと思う。
理由がなければ人に手を出さなかったケン。彼の立ち回りと横顔でシャッ!と終わる。あれだけ血生臭く無茶苦茶な青春物語を見せられたのに、ここだけ見ると、なんかお洒落な映画を見たような気分になるから不思議。
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