ちゃんちゃん焼き

神様メールのちゃんちゃん焼きのレビュー・感想・評価

神様メール(2015年製作の映画)
4.2
神様っていじわるよね、なんて映画の台詞であったりするけれど、そんな意地のわるーい神様が出てくる。主人公の女の子がかわいいからてっきりもっとかわいい感じと思ってたら、あえて神様一家を数世代前の典型的な家族にしたてていたり、キリストを滑稽な姿にしたりとシニカルで笑える映画だった。終始監督の想像力が遺憾なく発揮されていた。
主人公のエアの冒険は出エジプト記さながら、洗濯機を通って新たなる使徒を探してブリュッセルの街へ繰り出す。ミラクルとリアルが入り混じった世界が何とも愉快で、出会う人々も個性的で、知らされた余命を有効に生きようとする。それはエアが神様の娘だからというより、彼女そのもののの魅力のおかげでなのかもしれない。使徒の中では福音書家のヴィクトワールが印象的。スケート場patinoireの綴りを確かめるのが面白くて、くすっとしてしまう。彼が外でしか寝られないエピソードとか他にも義手のオーレリーの手のダンスやジャン=クロードの旅やウィリーのやりたいこと、ゴリラとの恋、小さな物語ひとつひとつが心に残った。
エア役のピリ・グロワーヌは『サンドラの週末』(2014)のサンドラの娘役の子で、そちらも観たけれどあっという間に大きくなってしまっていてすぐにはわからなかった。今後もたのしみな女優。監督は『ミスター・ノーバディ』の監督ときいて納得。ファンタジーとSFの融合が今回はファンタジーと聖書の融合になったとでもいえるだろうか。
終盤のCGもよかったし、エンディングロールの最後までたのしめた。ラ・メールを魚の骨と一緒に口ずさみたくなった。歌もまたこの映画の魅力のひとつだったと思う。
欧米諸国の反応も気になるところ。果たしてこれをどう受け止めたのだろうか。