よしまる

マリメッコの奇跡のよしまるのレビュー・感想・評価

マリメッコの奇跡(2003年製作の映画)
3.3
 創業者のアルミを失い事業は譲渡され一度は倒産寸前まで追い込まれたマリメッコ。その風前の灯となった企業を、どこの世界にもいる再生請負人みたいな救世主が現れて復活したというドキュメンタリー。

 その救世主パーッカネンは「窓がすごく汚れていたの。世紀末みたいだったわ。」とマリメッコCEO就任当初を振り返る。客のいないレストランのトイレが汚いのと一緒で、業績の悪い会社はどこも似たようなものだ。

 普通の企業再生とちょっと違うなと思ったのは、極端にデザイナー優遇に特化し、デザイナーが会社を作るというアルミの理念に則るかのように、まず幹部連中をリストラすることで、半年で黒字に転換させた。日本のメーカーなら真っ先にデザイナーから切ってくんじゃないだろうか。知らんけど。

 このフィルマのジャケ写にもある有名なウニッコ柄。本作でも「60年代の贅沢で完璧な空気が詰まっている」と語られている通り、バブル以降の2000年代のレトロフューチャーブームに見事に合致し、そのための布石となるライセンス展開や海外進出など、パーッカネンが時代を読み取るセンスに長けていたことも確かだし、なるほど広告代理店を経営しているだけのことはある。

 インタビューでも「下の者という言い方は死語にすべき」と言っているように、当時60代とは思えない新しい感覚を持っており、幹部も全員女性にするなど、つい最近話題になった現在のフィンランドの首相が34歳の女性で、閣僚19人のうち12人が女性というのもこうした彼女の業績が寄与している面もあるのかもしれない。

 ボクのお店でもマリメッコのファブリックをずっと扱ってきていて(リンクは貼ってないけどインスタで探せば出てくるかもw)、華々しい復活劇の後に、このあと盗作問題で揺れたりまあいろいろあるのだけれど、それでもマリメッコデザインの持つエバーグリーンな力は永遠。
 今なお若手デザイナーによる新作も発表され続けているし、最近マリメッコにハマったという若いお客さんも後を断たない。

 ところで本作。映画というよりそもそもがフィンランドで放映されたテレビ番組なので、映画の出来としては全然成ってない。むしろ映画となってこんな極東の地でも観ることが出来ることにこそ意味がある。
 挿入されるマリメッコのファッションアイテムを取り入れたイメージビデオも、さすがに古臭くて恥ずかしい。それでもなぜか見ていて楽しい気持ちになれるのは、これがデザインの持つ力だと信じて疑わないでいる。

 関係ないけど本日またひとつ歳を取った。デザインや創作物は人を幸せにする。ボクにはクリエイターとしての才能はこれっぽっちもないので、せめてやってるお店や、フィルマの戯言で、ほんのわずかばかりでもそのことをお伝えしていければいいなとあらためて思っておりますので皆さま今後ともよろしくお願いいたします。(なんだこれw)


追記→ここのレビューで低評価の方のコメント全部「ファブリックの女王」という別の映画のやつですね。まあそれはそれでわかる😅