Shintaro

ある戦争のShintaroのレビュー・感想・評価

ある戦争(2015年製作の映画)
3.6
『偽りなき者』の監督さんの最新作ではどんな理不尽がまってるんでしょうか。

デンマーク軍の隊長が、敵を視認せずに爆撃を命令し、一般市民を巻き込んでしまう。その判断の是非を問う裁判の行方を描く物語。

話の運び方が上手くて、何故隊長が判断を早やまってしまったのかがちゃんと描かれます。
ルールを守ったが故に救えた命が救えなかった事や、仲間への情など、本来ならなかったかもしれない結果を招いてしまう要素が散りばめられています。
言い訳したいが仕切れない状況が彼を葛藤させます。
『偽りなき者』でも、出来事はあらゆる角度からそれぞれの事実が生まれ 自分が思うように他人は思ってくれない虚しさを感じましたが、今作も近しいものを感じます。 しかし今回は実際に死人が出ているのでより複雑です。
映画は非常に後味の悪い終わり方をします。有罪か無罪かの結果に満足も不満も無く、ただただ消化仕切れない感覚が残ります。
物語後半は法廷劇が主ですが、その勝敗に緊張感を覚えるというより、現実の悲劇を離れた場所であーだこーだ言ってるその様が非常に違和感を感じさせます。
仲間が死のうが民間人が死のうが、同じく惨劇でしかないのに あれは良かった これは悪かったと言い争う事は滑稽ですし、それこそ残忍です。
戦争の異常性とは戦地だけで起こり得るものではないのです。
ただやはり、無責任と言われようとそんな思いを現実に感じたくはないものです。
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