和桜

ある戦争の和桜のレビュー・感想・評価

ある戦争(2015年製作の映画)
3.8
人が人を裁くには限界がある。
戦争に関わった人間を裁く際は尚更。
戦時の責任の所在がいかに曖昧で重いものかを考えさせられる映画。

“舞台はアフガニスタン。
平和維持のため任務にあたるデンマーク軍部隊が、パトロール中にタリバンの襲撃に遭う。
激しい銃撃戦により追い込まれる中、部隊長クラウスは敵がいると思われる箇所に空爆を指示し、隊員たちの命を救う。
しかし、後に空爆による死傷者は民間人だけであったことが判明し、クラウスは裁判にかけられることになるのだった。”

裁判での焦点は一貫して「本当に敵を確認したのかどうか」という点。
敵を目視したのなら民間人の犠牲もやむなし、目視できていないのなら結果隊員の命を救おうとそれは罪に当たる。
と言わんばかりに、この点のみが繰り返し追求される。

裁判というマニュアルのなかで、実際の命は数字として扱われ、実際の声は形式的なものへと置き換えられる違和感。
と同時に、ルールの上でこそ秩序は成り立っており、ニュルンベルク裁判など戦時の出来事を裁判で裁く意義を否定出来ないこともまた事実。
人が戦争を裁く限界と、裁きにより生まれる秩序の可能性の二つの矛盾に苛まれます。

そしてなにより、最も救われないのは当の本人であること。
有罪であれば犯罪者のレッテルをはられ家族の生活まで貶めてしまう。
無罪であっても彼は民間人の命を奪ったという事実に生涯苛まれることになる。
どちらの結果であっても彼が苦しみ続けることは変わらない。
戦争が人の生死だけでなく、人の根幹をいかに壊し続けるのかをまざまざと見せつけられる映画でした。

邦題の無機質感や、見終わった後もまとわりついてくるような雰囲気の演出も秀逸。
和桜

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