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ダゲレオタイプの女のmuraのレビュー・感想・評価

ダゲレオタイプの女(2016年製作の映画)
4.0
見えるようで見えない、と思ったら見える…黒沢清が繰り返してきた見えるものと見えないものの境界を描くスタイルを西洋世界に持ち込んでみたっていう、僕の目には実験的映画のように映った。

ダゲレオタイプという古い撮影手法に固執する写真家。露光に長い時間が必要ということもあって、妻をモデルに撮影をしてきた。ところが妻は自殺し、かわって娘がモデルとなる。そこに、若い男が助手としてやって来る。若い男は、苦痛を伴いながらモデルを続ける娘に恋し、救い出そうとする。そうしたなかでその家には、妻の幻影があらわれる…っていった話。

見えないはずのものがしだいに見えてくる…これはまさに僕の好きな「LOFT」や「叫」だなと(なぜか黒沢清のあの辺りが好き 笑)。それを西洋の旧館を舞台に撮ろうっていうのだろうが、やっぱり日本の方が精神的に迫り来るものがあるかなと。

それでも、このダゲレオタイプを用いたところは面白い。妻の幻影がしだいにはっきり見えてくる様子は、写真が銀板に徐々に映し出されてくる様子と重なるようで。

見える、見えないと言っているけど、これはホラー映画ではない。ホラー映画の手法を借りながら、人間の悲哀を描く。「岸辺の旅」もそうだった。黒沢清は新しい境地に達しているような気がする。
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