アニマル泉

夜よりも深い闇のアニマル泉のレビュー・感想・評価

夜よりも深い闇(1946年製作の映画)
4.5
ジョセフ・H・ルイスは端正で美しい。ルイスは最小限のカット数で的確に描く。
トップカットの電話のアップに手がインして顔のアップへパン、一気に引いて回転扇ごしの室内の俯瞰のフルショット、この大胆なメリハリのあるモンタージュで一気に鷲掴みにされる。そしてアンリ刑事(スティーブン・ジェレイ)が久しぶりの休暇で車で田舎に着くまでのモンタージュが素晴らしい。走るクルマ、窓から覗く夫人ごしに走る車、窓ごしに覗く夫人のガラスに走る車が映り込む、一軒家に車が滑り込む、洗濯物ごしに目だけで覗きこむミシュリーヌ・シェイレルの登場、アンリ刑事との切返し、運命の出会いだ。全く隙がない端正で流れるような美しさである。
ルイスが得意なのは横移動で「ごし」のカッチリした構図に決める技だ。あるいは俯瞰ショットから手前に歩いてくる父親に合わせてクレーンダウンして十字架ごしに娘の死を悲しむ父親のタイトサイズになるショットも忘れがたい。何回も死体発見の場面があるが、アンリが覗くとカメラがダウンして手前の死体ごしのショットになる。「窓」はルイスの重要な主題で本作でも窓ごしのショットは頻出する。なかでも秀抜なのは田舎に戻る列車の叩きつける雨の窓ごしのアンリ刑事のショットだ。何かを手前に配したり、枠にした「ごし」ショットがルイス印である。
本作は「靴」の映画だ。冒頭の靴磨き少年とのやりとりから始まり、アンリの靴を脱がすミシュリーヌ、そして犯行現場の靴跡まで一貫した主題になっている。
ルイスは階段を上がると不吉なことになる。かがり火も不気味だ。
鏡やガラスの映り込みもルイスの十八番だ。クライマックスでアンリ刑事はガラスに自分の幻想が映り込んで叩き割る。
本作は川と橋も印象的だった。
コロンビア映画。
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