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ショコラ 君がいて、僕がいるのろのレビュー・感想・評価

3.8
ベルエポック期のパリで人々を魅了した、フランス史上初の黒人芸人ショコラの実話。


以前から楽しみにしていた今作。

私は映画館でチラシを集めるのが趣味の”チラシ小僧”なのですが(笑)今作には2種類のチラシがあって。そのうち、見開きになっているチラシの裏に、ロートレックが描いたショコラとフティットのポスターが...!所々色が塗られただけのラフな素描のようで、とてもかっこいいんです(/ω\)♡

そんなオシャレなチラシを見ただけで、「ショコラとフティットの友情か~!素敵な映画なんだろうなぁ...(*´ω`*)」と想像していた私。
しかし、今作は「道化師のショコラを通して見る”人種差別”」がテーマ。かなりガツンときましたよ。


かつて名声を博した道化師フティット。今や落ち目の彼は、まるで「ライムライト」のカルヴェロのよう。
そんなある日、、カルヴェロがバレエダンサーのテリーと出会ったように、フティットはサーカスで”人食い族”を演じるショコラと出会う。

白人と黒人・・・かつてない組み合わせ

2人の芸はたちまち評判となり、ついに憧れのパリへ。
人気者になったショコラは浮かれ遊び、贅沢三昧。ギャンブルや酒、女に走る。ネタ合わせもしないショコラに、フティットは不満と不安を募らせる。

ショコラに忍び寄る人種差別の影

ある日、ショコラは身分証明書を持っていないという理由から刑務所に入れられる。そこで待っていたのは拷問だった。。

ショコラは幼い頃から差別を目の当たりにしていた。父親は白人に仕え、虐げられた。だから彼は誰に従うでもなく、1人の人間として扱われることを願っていた。
そんな彼はフティットに蹴られて笑いを取るという芸風にストレスを感じる。自分はフティットの引き立て役なんじゃないか。結局、人食い族として見世物にされていた時と何も変わらないんじゃないか。

しかし、ショコラの思いとは裏腹に、フティットはショコラの才能を認め、何より1人の人間として尊敬していた・・・。


とてつもなく印象的だった場面。

ショコラは恋人と一緒に「植民地博覧会」へ行く。
まさか・・・と思ったけれど、そのまさかが実際に行われていた。息が詰まった。フランスが植民地にしている国の先住民を”展示”しているのだ。それも生身の人間が柵の中にいる。柵の中で人々は生活しているのだ。普通に生活している彼らを見て、博覧会に訪れた白人たちは恐怖の表情を浮かべる。「黒いケモノが動いている」と。そして、旗を持ったツアーガイドが語る。「我々はこれを手なずけて、運びました」そう、まるで動物やモノを扱うかのように。

肉体的な痛み、例えばムチで叩かれるとか、そんな描写よりも遥かに精神的な痛みを伴うシーン。残酷で悲しくて、涙が出そうになった。

ロートレックやドガなど有名な画家が活躍した華やかなパリ。
人々の憧れの都 パリ。
美しい印象しかなかっただけに、かなり衝撃的だった。

その博覧会で展示されている国にはショコラの故郷もあった。そのブースの前で立ちすくんでいると、1人の黒人が近寄ってくる。彼はかつてショコラと幼少期を過ごした黒人だった・・・。

フランスで活躍し、仕立ての良いスーツを身にまとうショコラ。
一方で柵の中に入れられ、民族衣装をまとう彼。

あまりにも、あまりにも酷じゃないか。


ショコラとフティットの芸はもちろん楽しい。
衣装も劇場も、きらびやかで美しい。
観客とともに、私も黄金期のパリにタイムスリップしたような気持ちになる。

しかし、現実を見よ。
差別は容赦なく降りかかってくる。


今作は、ショコラとフティットの友情物語だとか、愛と涙の感動物語だとか、そんな綺麗な言葉で収まる話ではない。

ショコラは最後まで”自分”を貫いた。フティットから離れ、シェイクスピアの劇にも挑戦する。世間や差別と真っ向から戦った。
そんな彼の生き様を描いた作品だと私は思う。


最後に、、
主役2人の演技が素晴らしかった。
特にフティット役のジェームスティエレ。
彼の悲哀のこもった後ろ姿はチャップリンを彷彿とさせる。
ラストシーン、普段冷静で寡黙なフティットの大粒の涙に胸が熱くなった。
ろ