ろ

パターソンのろのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.2

白紙のページには
無限の可能性がある


バス運転手のパターソン。
馴染みある街並み、風景。
乗客のおしゃべりに耳を澄ますこと、
そして詩を書くことが密かなたのしみ。
犬のお散歩、バーで飲むビール。
いつもと変わらない、
かけがえのない日々を過ごす。

バス会社の同僚は悩みが尽きない。
パターソンは毎朝「大丈夫?」と声を掛ける。

バーで会う友人は、恋人に復縁を迫られる。
ある日、ついに事件が起きて…。

詩を書き留めたノートを持ち歩くパターソン。そこには愛する妻を想い、綴られた言葉がある。
その大事なノートを愛犬が…。

パターソンの日常には静かなリズムがある。
それは心臓の鼓動に近い。
そう、たしかに登場人物たちは”生きて”いるのだ。


心がチクチク、ヒリヒリと痛む出来事。
うんざりすること、
世界が味気なく見えること。
生きていく中で、私たちはいろんなことを感じる。
その心の瞬間を丁寧に切り取ったような映画だった。


この物語には、古い邦画的な趣があり、
パターソンが小津映画の笠さんに見える一瞬がたくさんあった。
だからわたし、すごく嬉しくなって、ウフフと笑いながら観てしまいました。


空気が澄んで、木が色づいて、
何か新しいことに挑戦したくなる。
そんな秋にピッタリの映画でした。
ろ