しゅん

七月のランデヴーのしゅんのレビュー・感想・評価

七月のランデヴー(1949年製作の映画)
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新文芸坐シネマテーク

動物園の象の真正面顔はどうして笑いを誘うのか。斜めから映っていたダニエル・ジェランの顔が横顔に切り替わる時にどうしてハッとするのか。鏡に映るニコール・クールセルの開いた背中はどうして顔以上に饒舌なのか。世界大戦後間もなくのパリの街角を行く若者達を追いながら、カメラは顔を、体を、あらゆる向きから捉え続ける。この映画は肉体をどこから見るか、前から見るか上から見るか(下から見るか横から見r)によって得られる情報が大きく異なることを鮮やかに示す。もちろん静止しているか動いているか(回転ダンスの躍動感!)によっても違いが生まれる。演劇学校と文化人類学クラス、さらにはジャズクラブが家を飛び出した若者のエデュケーションの場だと上映後のトークで大寺さんは説明していたが、この映画自体が表象を駆使した一つの授業なのだ。授業を受けた若者たちはやがてヌーヴェルヴァーグの担い手となって、映画界全体を大きく揺るがすことになる。

ジャズがまだ「けしからん」音楽だった時代を記録したドキュメントとしても最高。クラブに集う若者達のチェックのシャツとリーゼントのかっこよさにしびれました。
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