こたつむり

ゴッホ~最期の手紙~のこたつむりのレビュー・感想・評価

ゴッホ~最期の手紙~(2017年製作の映画)
3.8
★ 芸術家の苦悩を辿る哀しい軌跡

ゴッホが遺した手紙を届けに行く主人公。
しかし、期せずして彼の死に絡み取られていく。「なぜ、ゴッホは自殺したのか?」を追求する物語。

正直なところ。
物語の構成としては、やや退屈。
特に序盤は聞き込みが主体となりますからね。ゴッホや絵画に無学な僕にとっては「んあ?」と思わず口を開けてしまいたくなるほどに冗長。

…なのですが、一皮ずつ物語が捲れるたびに。
その奥底にある“諦観”に胸が痛くなるのです。
望まれない魂など存在しない…と声を高らかに上げたくなるほどに切ないのです。

これは、きっと無学の勝利でしょう。
ゴッホについて造詣が深ければ「ゴーギャンとの確執を掘り下げてほしい」とか「耳を切る経緯を見たかった」など思うところがあるでしょうからね。何も知らなければ「んあー」と飲み込むだけなのです。

また、ゴッホの絵画をモチーフとしていることも「ひまわり」と「自画像」くらいしか知らない僕にとっては全てが新鮮。自分の中のキャンパスが塗られていく感覚は気持ちが良く、思わず「んあ…」と言いたくなるのです。

そして、何よりも見どころである映像部分。
油絵アニメーションを思いついた発想力や、お金と時間を掛けた表現を選択した決断力、そしてそれを仕上げた技術力など、ただただ圧倒されるだけ。だから「んあー」と口を開けながら観ていましたよ。

まあ、そんなわけで。
かなり、独特なタッチの作品。ぶっちゃけた話、ベタリとしたゴッホの筆使いがグリグリ動くのは目が疲れますからね。気軽に鑑賞できるタイプの作品ではありません。

しかし、一見の価値がある映像技術ですし、本作をきっかけにしてゴッホに興味を抱く可能性もゼロではありませんから…体調を整えて鑑賞すれば、作品世界に飲み込まれる感覚を楽しめると思います。

よし。僕もゴッホのことを勉強してみよう。
まずはウィキペディアを読むところから。
んあー。
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