もるがな

ザ・コンサルタントのもるがなのレビュー・感想・評価

ザ・コンサルタント(2016年製作の映画)
3.0
裏の世界の会計士という設定ながら、話は意外と重厚的かつ丁寧な作り。死んだ目のベン・アフレックが暴れまくるハードな殺し屋アクションかと思いきや、蓋を開けてみればハートウォーミングな物語なのでパッケージ裏の説明で期待すると大きく期待を外すかもしれない。

ただ、出来そのものは悪くなく、主人公の自閉症設定が単なる設定でとどまらず、殺しの前段階の精神統一デスメタルタイムや、発砲音やマズルフラッシュに慣れるための下準備など、ちゃんとその性質に真っ向から向き合っているには好感が持てる。主人公の自閉症設定の掘り下げにはかなり尺を割いており、ベン・アフレックの演技力と相まって、キャラクターの作り込みは素晴らしかった。アクションは中盤と終盤の山場に2回ずつとこの手の映画にしてはやや少なめだが、これだけ無慈悲で無駄のないアクションには心が躍ってしまう。

しかし話が全体的に内向的で、特に回想が多過ぎる。丁寧な伏線回収はあるものの、それを踏まえても物語の構成に全く面白みを感じなかった。テーマは興味深いが全体的な絞り込みが甘く、かと思えば詰め込み過ぎと、構成面での失敗がとにかく目立つ。

特に捜査官サイドの謎解きパートが意識が飛ぶレベルでつまらない上に、分かっている話をしつこいぐらいに説明してくるという、拷問のようなパートだった。初見だとミスリードじゃないかと構えてしまうぐらいに説明過多。あと仕込んだ謎が多いわりには、一つ一つの謎に魅力が無いのも問題である。加えてテーマと謎の結びつきも弱く、謎が明かされることがテーマへの言及になっていなかったのは大きな失点だろう。また回想が多いこともあって致命的なまでにテンポが悪い。

あとこれだけ丁寧に作った割には、格闘術の修行パートにアジア的なものを美化し過ぎなエキゾチシズムがあって、全体で見るとそこだけトーンが浮いているのは疑問に思った。いいところはいいのだが、いい部分がそのまま悪い部分に直結しているという、何とも奇妙な映画である。正直、ここまで会話で説明しなくても良かったと思うし、そもそも殺し屋である必要があったのか?など根幹の部分に疑問を持ってしまった。色々と惜しい。
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