マヒロ

海は燃えている イタリア最南端の小さな島のマヒロのレビュー・感想・評価

2.0
イタリアの最南端にあるランぺドゥーザ島は、アフリカなどから地中海を渡ってやってきた多くの難民たちの目的地となっていたが、定員オーバーの船が座礁し多くの命が失われたり、たどり着いたとしても衰弱し医者の手が回らなくなるなど、大きな社会問題となっていた。
そんなランペドゥーザ島で暮らす一人の少年の生活を追いながら、難民問題の実態を描いた作品。

ドキュメンタリーに近いが、ナレーションなどによる説明もなく、それに加えて同じ島に住んでいることだけが共通点の少年の生活を淡々と映し続けるなど、とにかくこちらに完全に解釈を委ねるような形になっている。
難民問題が深刻なのは衝撃的な映像の数々を見ただけで分かるし、映画という媒体でそれを訴えるということに異論はないが、そこに「何も知らない人」という立ち位置でランペドゥーザ島に住む少年を据えていることにある種あざとさを感じてしまった。お気楽に暮らす少年は映画を観ている我々の象徴でもあると思われるが、それはわざわざ映像として挟み込まなくても分かることだし、結局最後の最後まで二つの視点が交わる事なく終わってしまうというのも映画としてどうなの、と思ってしまう。そもそも小学生くらいの子供に何も知らない奴代表みたいな立場を背負わせるのもちょっと酷な話では。もうちょっと深い意味合いがあるのかもしれないが、自分としてはこの構成に違和感しかなく、逆に映画のメッセージ性を殺してしまっているようにも思えた。

(2022.45)
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