ウツボ

ファウンドのウツボのネタバレレビュー・内容・結末

ファウンド(2012年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

スプラッタジュブナイルの金字塔。
そんなジャンルあるんですか?いや自分も初体験なんですが。
実は人生で一番好きな作品なので、めっちゃ書いちゃいますごめんね。


低予算ながら遠慮のないゴア、ガッツリとゴアを見せつつ軸に据えたのは子供の青春、子供の青春だというのに息苦しく仄暗い、それなのに美しい。
そんな不思議なバランスの末に存在しているこの映画は間違いなく名作です。

まずゴアのお話をしますと、劇中劇のHeadlessで行われた猟奇的変態行為は数ある映画の中でもなかなかはっちゃけているのではないかと思い大いに楽しめました。
おっぱい切っちゃうし、目食べるし、首犯すし(?)、うーん目一杯やってます。
低予算だからクオリティもそれなりなのですが(それでもグロいですね)、これに潤沢な予算がついちゃったら……?!と考えるとワクワクを禁じ得ません。

子供が見ちゃうんですか〜?とびっくりしますが、子供って普通に怖いものや気持ち悪いものに惹かれますよね。
そういったリアルなというか、大人の理想する子供像で主人公を描かないのはすごくこだわりを感じました。
しかも悪魔の子的な邪なものとして描かず、横道を行く羽目になった者たちが辿り着いた仄暗い場所といった描き方をしているのが素晴らしいです。

ゴアの質だけに留まらずストーリーがとても良く出来ており、オイオイ抜かりなしかよ〜〜と驚かせられます。

普通に見える家庭に潜む衝撃的な秘密、その秘密をどこか超然と受け入れている11歳の主人公。
しかしそこに突飛なものを感じないのは、どこまでも少年の心に寄り添うことで我々を11歳の時分へとしっかり誘い、主人公の心が傷つく過程を丁寧に映してくれるからでしょう。

学校はもちろん、趣味の場でも宗教活動の場でも丁寧に丁寧に心に傷をつけられていく主人公。なんて脚本だよ。
大人からすれば世界は広いんだからとなりそうな場面でも、徹底した視点と丁寧な誘導によって視聴者は11歳だよと教え込まれる(??)ので、主人公の傷ついた苦しみがダイレクトに伝わってきます。
(それとも自分が現在進行形で社会に馴染めていないのが大きく作用しているんでしょうか。不安になってきた)

主人公が何度も傷ついたからこそ、道を踏み外すことになった兄は過去の自分を見ているかのように弟を労わり、弟も狂人の兄を救いとして見てしまう。
それが見て取れる決定的なものとして、親友と絆を深め思い出を消し去った秘密基地たる野原で許されない想いを兄に吐露し、兄がそれを受け入れるシーンに至りますが、これがとっても悲しくて、息を飲むほど美しいんですよね。
額縁に入れて飾りたいですよホント。
思い出を燃やすシーンも。

主人公、いじめられていて内気なのですが、必死に生きていて好感度が高いです。(見た目も可愛いですしね)
同様に狂気の存在として我々を驚かせる殺人鬼の兄も魅力的です。(見た目もカッコいいですしね)
殺人鬼を魅力的に描くことが出来るのは名作の証拠。そうかな。そうです。
兄は父親からは疎まれているし別に社会的地位もない。
それでも主人公は親でも教師でも牧師でもなく、そんな兄を自身のヒーローとして選びます。
殺人鬼だと知っていても、主人公からは兄が一番自分の気持ちを汲んでくれていると感じてしまうこの描写が好きですね〜。
しかし兄が弟のヒーローとして存在できるのは道を踏み外した殺人鬼だからだなんてやっぱり悲しい。

想いを吐露され弟を救おうとする兄もまた、主人公に救われていたのでしょう。
主人公が確実な手段で自分を救ってくれる味方を求めていたように、兄も自分の行いを、存在を肯定してくれる存在を欲していたんでしょうね。
(Headlessで育まれた変態性欲まで肯定してもらったつもりでいるのはシュールで可愛い)
それが他でもない自分が唯一愛情を向けている存在から肯定されたというのは嬉しかったんだなあ。
そりゃあ弟のためならなんでもできちゃいますよね〜……。
(問題は兄はすでに狂気に陥っており、殺害という手段を既に究極のものだとは認識していないことですが……)
でも兄は歪みきっちゃったから、当然円満なんてゴールを通り抜けられるわけがない。

これらから導き出されたラストシーンは本当に悍ましくて苦しい。
悪夢なんて生易しいものではない、考え得る中でも最も地獄に近い終わりに辿り着いた兄弟の姿の艶かしさたるや…。監督のど変態!!
でも、彼らの結末はこれしか成り立たないんだと心の底から実感できるんですよね。
それはつまり全ての要素がカッチリハマって作用しているということだと思います。
ゴア要素もジュブナイル要素も全部要る。劇中劇だって全部活かされている。監督の天才!!ありがとう……。

も〜ベッタベタに褒めてしまいましたが、自分にとってそういった作品に出会えたのは大変幸せなことなのでどうしてもウキウキしてしまいますね。
本当に凄いものを観たし、観てよかったです。愛してる。(語彙がない…)

あ、劇中劇のHeadlessは本当に映画化しており、そちらも観ましたのでいずれ感想を書きたいですね。
ウツボ

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