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T2 トレインスポッティングのohassyのレビュー・感想・評価

T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)
3.5
1996年といえば僕は大学生時代。
全身全霊命懸けでモラトリアムを満喫していた。
ミスターモラトリアムとは俺のことだ、誰にも負けない自信がある。

日本でもバブルがはじけて、阪神大震災やオウム事件なとが相次ぎ時代の変革が起きていたけれど僕にはそういう予兆はなかった。
友人と同居しアルバイトに明け暮れる。
レントンたちはドラッグに浸っていたけれど、僕らはドラッグなんて見当たらなかったから酒に浸っていた。
バイト先のとびきり眩しい女子高生が早朝にセーラー服で部屋を訪れてきたのに相手もせずに居眠りしてしまい、起きたら帰っていたという自分史上最悪の失態を犯したのもこの頃だ。
タイムマシンが完成したらまず行くのはその時と決めている

シネマライズという映画館は、それはそれは観にくい作りの劇場で全然好きじゃなかった。
でもそこでしか観られないのだから仕方がない。
せめて恵比寿でやればいいのにと思いながら、タランティーノやコーエン兄弟を観たものだ。
ギャラクシークエストとかね。
ちなみに恵比寿と言えばウディアレン。
あの映画館は席がゆったりしてるしスクリーンも優秀だし整理券を配ってくれるし最高だった。
復活してくれて喜ばしい限りです。

トレインスポッティングという映画はもはや語ることもない。
本作のパンフレットには例をみないほどたくさんの映画評や解説が載っている。
パンフレットの制作費を考えればありえない分量だが、この映画のことを書かせてくれるならタダでもいいと思う評論家はたくさんいると思う。
きっと僕と同じ世代かちょっとだけ上だろう。
気持ちはよくわかる。
詳しい評論は彼らに任せられる。

20代を通して何度もDVDをかけているけれど、でも何度も観たという感覚はあまりない。
どちらかといえば音楽に近い楽しみ方をしていた。
友人たちとの会話の裏で流して、会話が途切れた時に眺めたり、意中の子との会話が続かなくなってしまった時に眺めるふりをして作戦を立て直したり。
つまりは映画作品というよりは個人的な時代に結びついていて、そういう意味でも音楽的な作品だなと思う。
何かを思い出すきっかけになる映画。
すごいことだ。

T2は完全に前作ありきの内容なので、ことのほか観客を選ぶ作品だ。
これ単独で観ることにほとんど意味はないと思う。
いやどうかな。
多分そう思う。
ただし、絶対に劇場で観るべき人がいるのも確かだ。
それはもちろん僕であり、前作をロクでもない若造だった時に目撃した連中だ。
レントンたちとともに20年という歳を重ね、またスクリーンで会うことになるなんて、多分他では経験できない。
映画の良し悪しなんて超えちゃってる体験だよ。
スターウォーズをのぞけばね。

彼らはしっかり歳をとっていた。
まあまあ残酷な感じで。
あの頃を拠り所にして今を生きていた。
そういう気持ちは僕にはよく分からない。
あの頃は楽しかったよねともちろん思うけれど、だからと言ってその頃の話ばかりで夢中にはなれないし、当時のノリでいることもできない。
久しぶりに集まるのは楽しいけれど、その場で「定期的に会おうよ」なんて言っても、次の機会が実現することはあまりない。
(もちろん例外はある)
それは僕の性格が基本的に薄情で個人的にすぎるのが原因だと理解してるけどどうしようもない。
そういうものだ。

ダニーボイルの作品の一番の魅力はどこかと言われれば、ぼくは「読後感」と答えたい。
本作と前作はもちろん、スラムドッグや127時間といった傑作も、最も賞賛すべきはラストカットを観終わった直後の気持ちの高揚感だ。
うわーって感じになる。
あの。
127時間なんてホントすごい。

T2は前作に通じる読後感がしっかりと担保されていて、あのトラックバッグをみたら、やっぱり監督も読後感大事にしていたんだなと確信できた。

それとやっぱりキャラと役者が素晴らしいんですね。
ユアンマクレガーのやんちゃな笑顔は今も変わらず。
男の僕でもキュンときます。
新キャラのベロニカも素晴らしかった。
4人との対比として象徴的で、若くて綺麗でセクシーで。
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