[愚かな者]
久しぶりに妻と一緒に映画を見ることに。
仕事で疲れていたため、iPhoneでも触りながらの「ながら見」スタイルにしようかと思っていた。
ところが、冒頭での「バスの車内の撮り方」が何やら尋常ではない。
主人公よりも周りの人間たちが、何か獣のような雰囲気で先にフォーカスされている。
ここから映画が終わるまで、私はiPhoneを手に持つことはなかった。
ある事件を起こした妹。その重さを抱えながら惨殺事件を取材する兄、二人の物語だった。そして兄が取材する対象者達は皆、自分の事を話さないようにしているが、実は本質がダダ漏れになっている事を兄は知っている。
静かに、静かに、兄は彼らを見ている。
と同時に、妹は「ある告白」を始める。
とても淡々とした中に、突如「北野武映画」のような静かな暴力が振り落とされる。
パズルのピース、数珠つなぎ、連鎖、反射、血。陳腐な言葉しかでないが、ハッキリしているのは、答えなど決して見えないものが開かれていき、私達がどう受け止めるのかを突きつけてくる。
妹の告白は本当に苦しくてたまらくなった。なぜなら、あの時、妹は画面を通してこちらを見ていたからだ。
私は彼女の告白を聞きながら、
なにか覗かれた気持ちになっていた。
私の
とても愚かな部分を。