茶一郎

オクジャ okjaの茶一郎のレビュー・感想・評価

オクジャ okja(2017年製作の映画)
4.3
その作品の精密度から「韓国の黒澤明」と称されながら、エンターティメント性の高い素質は「韓国のスピルバーグ」と言われる。
もはや説明不要、現行トップ若手監督のポン・ジュノ監督が『グエムル-漢江の怪物-』の次に作った怪獣映画である今作『オクジャ』は、まさにスピルバーグが『ジョーズ』に続いて『E.T.』を撮ったような、少女と怪獣との友情、ある種女性同士の友情・ロマンシスを描く『E.T.』×『トトロ』のような抜群のエンタメ作でした。

今作『オクジャ』は奇しくも、初めてVOD(今作はNETFLIX配信)限定作品がカンヌ国際映画祭のコンペディションに選ばれたことで、劇場と配信と映画の関係性・新時代における映画のあり方を改めて考えさせる作品になってしまいましたが、個人的にはこれこそ大きなスクリーンと良い音響がある環境で見たい作品です。しかしながら、新しい映画の提供の形式を、新時代のトップを担うポン・ジュノ監督が選んだというのも非常に興味深い点。尤も、『それでも夜が明ける』〜『ムーンライト』に引き続き、今作を製作したブラッド・ピット率いるPLANBの確かな審美眼と戦略性には相変わらず舌を巻きます。

さて『オクジャ』。繰り返しになりますが、これはカンヌの作品選定者のいやらしさが見えてしまう程、誰でも笑って、楽しんで、泣ける最高のエンタメ作品です。今作のような、いわゆる『E.T.』系の映画は多くあれど - 例えば日本でも原恵一監督の『カッパのクゥと夏休み』という秀作があります - その系列の最高峰と言える作品ではないでしょうか。
ポン・ジュノ監督作品には、アメリカに象徴されるような物質主義的な現代社会を皮肉たっぷりに笑う『グエムル』(環境破壊)、『スノーピアサー』(社会格差)、といった作品群がありますが、今作もその系譜にあたります。(もはや姉妹作と言っても良い気がします)専ら、ポン・ジュノ世界において、悪しき現代社会をティルダ・スウィントン扮する魔女が牛耳っているという共通点も面白いです。
今作は特にハリウッド役者陣がぶっ飛んでいて、『ナイト・クローラー』より狂っているジェイク・ギレンホールや、前述の『スノーピアサー』より深刻なティルダ・スウィントンは夢にまで出るレベルでした。
そしてポン・ジュノ作品は、必ず登場人物が悪しき現代社会から、新たな生命と共に真っさらだけど豊かな自然社会に身を置いて終わります。今作の「怪獣の口内に宿る生命」は、言わずもがな『グエムル』へのオマージュでしょう。

絶望的な状況は、必ず次世代の希望に繋がっていく。この『オクジャ』こそ劇場で見たいと一度は書きましたが、こんな素晴らしい作品を何度も家庭で見られる今の時代も良いかな、なんて思いますよ。(と、作品にならって希望に繋げてみる)
茶一郎

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