みほみほ

オクジャ okjaのみほみほのレビュー・感想・評価

オクジャ okja(2017年製作の映画)
3.9
🐷2020年301本目🐷

間接的に色々な事を考えさせられる複雑な作品だった。誰が正しいとかおかしいとか、共感するとかしないとかではなくて、全てにおいての矛盾を叩きつけてくるような表現力の柔軟さに驚かされる。

「パラサイト 半地下の家族」の公開当初、いきなりの注目度で驚かされたが、過去の実績もあり、そして「オクジャ」と来たら、注目されて当然だと今頃気付いた…。豪快にも凄いところをついてくるし、人間の存在にハッとさせられる。


本来なら命の重みに違いがあってはならないはずだが、今作の中でもそれぞれの目線の中に、命の重みの順位は存在していた。
例えばオクジャを救う少女は、庭で鶏を放し飼いして、おじいさんと一緒に何食わぬ顔で食べている。そういった一つ一つの矛盾が、命の尊さへの疑問点として心に訴えかけてくる。

誰しもが、生きる為に自分の中で何を犠牲にするかを判断していると思う。肉を食べない人は、倒れそうになりながらも菜食主義を貫いているし、ビジネスに目をつけた人達は、残酷さなどは考えずあくまで利益の事を考えている。オクジャを救おうとする女の子は、単純に一緒に生まれ育ったオクジャへの愛着から家族だと思っている。


人間がこの世に存在していく以上は、今の現状は変わらない。昔は狩りをしていたのに、今では誰かが育て、誰かが殺し、手を汚さないまま、美味しいお肉を安価に食べる事が出来る。

加工する人々も残酷に見えるが、家畜の力を考えると命懸けの作業なのかもしれない。これを良いとか悪いとか…突き詰めだしたら、本当に何が正解か分からなくなる苦しみを、考えさせられる訴えかけてくる作品にも思えた。

正直なところ、動物に苦痛を強いる作業、サシのチェックやら…麻酔せず様々な処置をする作業なんかは廃止してほしいし、家畜だからどうせ殺すから何も変わらないではなくて、大切にして欲しい…。(これは酪農やってる人からしたら、綺麗事なのか?!)

なんかもう、人間が管理すると残酷になるなら、清潔な自然工場で全て全自動にして貰いたい。(この考えも結局はお肉を食べる人間の綺麗事なんだろうけど…ね。)
 

オクジャにとっては安心する最後であったが、そうならなかった者達の声が…無情にも響いていて、その時の少女のどうしようもない哀れな表情が切なかった。命の重みに絡んだ不条理がこれでもかと観れたし、映画の中にメリハリがあって、飽きる事なく没頭していた。


それにしても…キャストが豪華で驚いた!!

監督はポン・ジュノだけど、韓国とアメリカの合作みたいで、出てくる大半はアメリカ系なので…なんとなく「翻訳は尊い」ってのも、ポンジュノの皮肉なのではないか?と感じて、少し面白かったり…。

ギレンホールは日本版ムツゴロウかよ…!ってキャラクターだったけど、やっぱり狂った役柄をモノにしてて、凄い。でもあの瞳がサイコな方面ばかりに活用され過ぎるのも、若干悲しい。

ポール・ダノが出てきて、嬉しかった。彼本当、優しい顔してるね!初めて見たのが「プリズナーズ」だったから、顔をよく認識できてなかったが、その後魅力を知った俳優さん。

そして韓国勢も、「パラサイト 半地下の家族」の息子役の子も出ていたし、ついこないだ鑑賞した「バーニング」のベン役で見事な金持ちの見下し方を演じてた彼も出ていたし、オクジャのおじいさん役もよく見かける顔で嬉しかった。あれ?あのおじいさん、「グエムル」の人かな?多分そう。

オクジャと少女の自然の中での生活は、憧れだったなぁ…。オクジャがトトロなのかと思ったし、お尻さすってあげると、うんちポコポコ出るのも可愛かった。うんち鉄砲攻撃、良かったわ〜!


オクジャの作品写真、風刺が効いている。オクジャの上に立つ煙突は、金儲けの為に命を操る金儲け大企業への皮肉にも取れる。
期待を裏切らない面白さでした!!
ちょっと観るか迷ってたけど、観れて良かった。
みほみほ

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