tetsu3

ウインド・リバーのtetsu3のレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.5
闇。ずぶずぶの闇。
真っ白な闇だ。

ネイティブアメリカン保留地であるウインドリバー地区で起こったレイプ致死事件を題材にした作品。
だが、単なる事件を扱ったクライムスリラーではない。
アメリカ合衆国の暗部であるネイティブアメリカンの実情を鋭くえぐっている。それは深くて苦しい。
彼らは土地も文化も伝統も尊厳も全て奪い去られ、保留地という名の墓場におかれている。
この地区における法律上の捜査権限の問題や、生活の困窮さやこの土地で生きていくしかない人の、特に女性の扱われ方等をうまく散りばめている。

そして。ラストに表れるテロップが、闇の深さをさらに際立たせる。。

事件の真相に迫っていく主人公の二人は、アベンジャーズのジェレミー・レナーとエリザベス・オルセン。
ジェレミー・レナーは、重く静かながら迫真の演技で、ストーリーを引き立たせる。
台詞ではない動きや表情が悲しさを表現していた。
エリザベス・オルセンは新人FBI捜査官として、登場当初は軽さが目立つもこの土地の根底に流れる重く深い闇を知り、成長する姿を好演。
いい味だしてるベンは、ダンシズウィズウルブスの彼。(老けた。)

全編を通じて背景はずっと雪。
単調になりがちだが、それがゆえに緊張感を持続させ、その舞台に時折強烈な音や色をぶちこんでくる。


正直、謎が多いわけでもなく、また、脚色に難がある部分も感じたが、この題材に挑んだこと、そしてそれを余計なものを取り入れず、ソリッドに演出したことは凄いことなのだと思う。

強い作品だった。
tetsu3

tetsu3