FumiyaIwashina

ウインド・リバーのFumiyaIwashinaのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
3.8
雪に覆われたネイティブアメリカン旧保留地で見つかった女性の遺体。実際の出来事に着想を得て作られた物語。最後にどんでん返しがあるわけではなく、ミステリーとしての要素はあまり期待できない。それでも、静寂と孤独だけが残された場所で生きる男たちの苦悩、憎しみ、そして希望を力強くあぶり出している。
特に自身も娘を失い、現地の案内人として、FBIから送り込まれたジェーンに協力するコリーの言葉が重く深い。娘を失った父に対しては「悲しみから逃げちゃだめだ。逃げたら全てを失う。とことん悲しめ。」
「怒りが込み上げ、世界が敵に見える。」と話す道を間違った若者に対しては、「俺は感情の方と戦う。世界には勝てない。」
助かったのは運が良かったからと話す相棒に対しては「ここでは運など存在しない。生き残るか諦めるかしかない。強さと意志が物を言う。」
どれも、苦しみを耐え抜いた心の強い人間にしか言えない言葉。
メキシコにおける麻薬カルテルという巨悪をえがいた「ボーダー・ライン」も興味深かったが、ネイティブ・アメリカンの視点から隠れた闇にスポットライトを当てた今作もとても意義深い。