茶一郎

デッドプール2の茶一郎のレビュー・感想・評価

デッドプール2(2018年製作の映画)
4.1
 今度の「Fワード」は「ファッ○」ではなく「ファミリー」だ!寝かしつけた良い子も起こして良しな『デッドプール2』!
 過激な暴言、下品な言葉遣いもさることながら、自身が映画の中のキャラクターである事を自覚している無責任ヒーローを主役に構えた『デッドプール』シリーズ二作目です。

 前作は、R指定にも関わらず全世界で大ヒット、おまけにゴールデングローブ賞・ミュージカル・コメディ部門の作品賞と主演男優賞にノミネートされるなど興行・批評的な成功を収め、現行映画界の台風の目であるアメコミヒーロー映画に新しい可能性を提示した一方、後発のR指定ヒーロームービー『ローガン』はアカデミー脚色賞にまでノミネートされ、さらに高い評価を得ました。本作『デッドプール』は、その『ローガン』に中指を立てて始まる、何とも痛快なオープニングからまず心を引き込まれます。
 そして最もPTAが毛嫌いしそうな本作は、前作同様やはりお行儀の良いテーマを語る。本作は前作の「愛の物語」を拡張し、失意のヒーローがもう一度、「ヒーローとはなんたるか」その良き心を取り戻す物語を描きます。
 加えてデッドプールと同じくややお喋りが過ぎるその語り口は、「X-MENの公民権運動における象徴」や「現代的ポリティカル・コレクトネス」を物語に組み込み、本作を「疑似家族モノ」、「マイノリティの物語」に仕上げました。学校で一番の不良が最も優しい心を持っている、この語り口は元暴走族の神父の説法並みに心に響くかもしれません。

 そんなお行儀の良過ぎる語り口はさることながら、製作費、お話のスケール、登場人物の数をはるかに拡大した正統派な続編としても『デッドプール2』は、前作ファンを満足させるものに仕上がっていると思います。
 また監督に、現行ハリウッドのアクション最前線にある製作会社「87イレブン・アクション・デザイン」の共同代表デヴィッド・リーチ氏を起用するなど、アクション面でも前作を更新する構えは十分。デヴィッド・リーチ監督の前作『アトミック・ブロンド』同様、ある生身の女性が活躍するアクションは本作の白眉と言えます。
 
 何よりも本作『デッドプール2』は、主演兼製作兼脚本を務めたライアン・レイノルズ、ハリウッドのヒーロー映画に見捨てられた一俳優の物語として特別な作品になっていました。
 自身の黒歴史を自覚した上でそれを笑ってみせる、コメディの真の底力はそこにこそあります。
茶一郎

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