しんご

ブレードランナー 2049のしんごのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.3
前作のクオリティが高い分、大作映画的な大味続編になるのではないかと不安を感じたがフタを開ければオリジナルに敬意を払いつつ、それを更に深化させた傑作だった。

前作でのデッカードとレイチェルの切ないラストから30年後。核兵器放射による「大停電」でレプリカント製造が禁止となり倒産したタイレル社に代わり、新型レプリカントを製造するウォレス社と新たなブレードランナー・Kの闘いの物語。

「何を以て人と定義できるのか?」という哲学的テーマを「レプリカント」というツールを駆使しながらずっと追究している本シリーズ。

前作ではレプリカントが人類に反逆するのがストーリーの核であったが、「人間」「旧型レプリカント」「新型レプリカント」とレプリカント側でも価値観の異なる者が現れ、より複雑さを増した本作。本編のほとんどをKの出自にクローズアップすることで「人」と「レプリカント」の意義をかなり深く掘り下げている。

加えて、「人」でも「レプリカント」でもないKのホログラフ恋人ジョイが本作から登場したことで観客は更に深い考察を強いられることに。Kとジョイのラブシーンは余りに切なすぎて思わずホロッときた。

ホロとの恋を通じて自分の存在意義に悩み、自分の記憶の真偽を探ることでさらに迷宮入りし葛藤するKに絶え間なく降り注ぐ雨、砂嵐、雪という天候も本作の非情さを上手く演出していた。特に雨の街並のシーンはオリジナルより暗く、そして重い。

デッカード登場から物語は怒濤の展開を見せるが、ここでも「大義」という極めて人間的な動機が扱われるのも興味深い。その「大義」がラストに繋がる様も考えさせられるし、あのゴズリングの芝居は渋い。
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