耶馬英彦

ブレードランナー 2049の耶馬英彦のレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.0
 アメリカではドナルド・トランプが大統領になったことで白人至上主義者が勢いづいているという話だ。人種の坩堝、多様性の集積みたいな国であるアメリカで、民衆の精神が全体主義、画一主義に傾いているというのは、まさに不穏な現代という時代を象徴している。
 本作品は白人と黒人の対立図式のように、人間とレプリカントの差別構造を描く。小競り合いが長期にわたって延々と続くような中途半端な対立ではなく、どちらが生き残るかという究極の争いになるところがアメリカらしい。アメリカという国は精神性の深いところにレイシズムが横たわっていることがよくわかる。
 ヴィルヌーヴ監督は「メッセージ」という思索に満ちた傑作で哲学的な世界観を披露した。この作品でも人間のアイデンティティについて最終的な問いかけをしている。
 その答えが、家族や血の繋がりといったアメリカ人の大好物に近づいていくところは不満だが、必ずしも主人公の目的や行き先がはっきりしておらず、ベクトルのままでストーリーが終わるところは「メッセージ」の手法と似ていて、観客に多様な解釈を許す。「メッセージ」には及ばないものの、こちらもスケールの大きな傑作である。
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